7 POWERS――最強企業を生む7つの戦略 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 今までの企業戦略は、限られた業界内での優位性だけを考えていたかもしれない。もうそれだけでは足りない。
    全く異なる業界から、想定しない形で見えない敵が攻め込んでくるからだ。
    代表的企業はAmazonだと思うが、今までの業界内の常識とはお構いなしにやって来る。
    そしてその業界の秩序を破壊し、全てを刈り取って独占していく。
    まさにその背後には雑草すら生えないという状況であるが、これが今いたる業界で起きていることだ。
    自分のいる業界だけは安全だと思っていると、足元を掬われる。
    つまり、これからの戦い方は、過去の戦略が全く役立たないということなのだ。
    どこから攻めてくるか分からない敵を事前に想定して準備することは出来ない。
    だからこそ、防御のためにもこれら7Powersを備えておくことが必要なのだと、著者は説いている。
    本当に大事な事だと思うが、このことに気が付いている現経営者がどれだけいるだろうか。
    現経営者は、サラリーマンの競争で勝ち残った成功者だ。
    若かりし頃に現場で働いていた時代は「同じ業界内でどれだけシェアを奪うか」という戦い方が主だったと思う。
    そこにはライバル企業の顔も見えていたし、その相手に対する戦略を考えて実行すればよかった。
    いわば決まったフィールドで、敵の顔が見えた状態で、1対1、もしくは2対1など、少数同士の戦いで済んでいたのだ。
    その状況が大きく変わってしまった。
    これは業界の特徴でもあると思うが、概ねほとんどの業界が今は同じように変化の波に晒されている。
    戦う場所も、視界が見渡せるフィールドではなく、薄暗いジャングルのような訳が分からない環境。
    どこからどのタイミングで敵が出てくるか全く予測できない。それも、虎が出てくるのか、蛇なのか、毒虫なのかすらも予測できない。
    そんな状況の中で、これからの企業はどういう戦略で戦えばよいのか。
    当然であるが、現経営者はこれらの戦い方を体験したこともない。
    この状況で、本当に最適な決断を下せるのだろうか。
    そんな経営者について行って、自分の身は本当に大丈夫だろうか。
    我々はそんな時代を生きているのだと自覚する必要がある。
    これからの戦略は、勝つための戦略というよりも、先の見えない時代に「負けないための戦略」と考えた方がよさそうだ。
    武器は沢山持っていた方がいい。
    例えその場所が薄暗いジャングルであっても、もしかすると空を飛べるツールを持っていたら、想定外の敵であっても攻められずに済むかもしれない。
    会社を守ることは、自分の身を守ることにも繋がる。
    やはり本書に記す7つの武器は持っていた方がよさそうだ。
    1)規模の経済
    2)ネットワーク経済
    3)カウンター・ポジショニング
    4)スイッチングコスト
    5)ブランディング
    6)競合なきリソース
    7)プロセス・パワー
    確かに納得だ。
    「これからは分散化の時代だ。民主化だ」と言いながら、個人事業主や中小企業はやはり不利な部分もある。
    1)は、事業規模を拡大することが効果的な防御に繋がるという発想であるが、その通りだろう。
    2)は、とにかく利用者を増やして利便性を磨き続けるということか。
    経営理論でも「ネットワーク効果」が有効な事例は沢山ある。同じ話だ。
    3)は、どこを狙うかの話。場所というか位置取りと考えると、ジャングルの中で空飛ぶツールを持ったら確かに攻め込まれにくいだろう。
    4・5)も経営理論では散々語られている話。
    5・6)は、昨今の決算書で見えにくい会社の資産をどう可視化するかの話にも関連する。
    知的財産でどうやって勝負をするかは、様々なプレーヤーが狙っていることだから、そんなに簡単な話ではない。
    ついつい本で読んだことを安易にやれそうと勘違いしてしまいがちだが、正直難易度としては非常に高いと思う。
    逆にこれらを確保できたら、間違いなく大きな力になる。
    7)は組織内の暗黙知の話か。
    かつては新卒で就社して、終身雇用で勤め上げるという人生だった。
    企業内には様々なノウハウが蓄積され、それは外部にすら流出しなかった。
    今は逆に、社内で継承することすら困難になっている。
    このパワーを今持っているならば、失ってしまうのは本当にもったいない。
    もちろん外部流出はさせない訳であるが、これだけ雇用流動化が進みそうな中で、どうやって企業内の暗黙知を継承していくのか。
    ここは人事のパートでもあるが、課題を放置しないで、何とか継承する道を模索していくしかない。
    本書に記載された7Powersは、奇をてらったものでは決してない。
    むしろこれからの経営戦略としては至極まっとうな基本のキのような話であったと感じる。
    だからこそ、現経営者に気が付いてほしい。
    昔の極ごく限られた範囲内の業界では、これら7Powersを持っていなくても生きていけたのだ。
    それがもう許されなくなってしまった。
    生きていきたければ、新しい力を手に入れろということだ。
    本当に安穏としてはいられない。
    いつどんな敵が攻めてきて、業界内を破壊してしまうかも分からない。
    想定外は必ず起こる。
    それでも生き残る策こそが、これからの経営戦略なのではないだろうか。
    自社でこれら7Powersを持つことが出来るのか。どうすれば持てるのか。
    真剣に議論して考えていきたいと思う。
    (2024/1/14日)

  • 先輩におすすめされて読んでみた。
    分量自体はそんなに無いので、サクサクっと読めた。学者さんらしい物言いというか書きっぷり。
    学問的な戦略と実務的な戦略を分けて考えており、今回論じられている7パワーズは、学問的研究から導き出されたビジネスを成功させるために必要な羅針盤とのこと。ひとつひとつのパワーを見ていけば、なるほど、という感じ。いい発明があって、それをいつどのように活用していくのかが重要。7パワーズに沿って、突っ込もうとしている市場の現在と将来を見極めながら優位性を出し続けていく。
    まあでも発明が前提にあるのはちょっとずるいような笑イノベーションを起こすことに皆苦労してるわけで。

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