ビジネスの名著を読む〔リーダーシップ編〕 (日本経済新聞出版) [Kindle]

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制作 : 日本経済新聞社 
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  • 『自助論』は「賢者の目は頭の中にあり」と言います。
    (引用) ビジネスの名著を読む「リーダーシップ編」、著者:高野研一、編者:日本経済新聞社、発行:株式会社日経BP,日本経済新聞出版、発売:日経BPマーケティング、2022年、92

    働き方改革、Z世代の採用、非正規雇用の増加…。私は、働き始めて30年が経過しようとしているが、その間、職場環境が激変したと思う。それに加え、新型コロナウイルスの感染症拡大による影響により、テレワーク、郊外への移住などにより、社会環境も激変した。
    そのような不透明な時代だからこそ、新たなリーダーシップを謳った書籍が店頭に並んでいる。しかしながら、いつの時代においても、リーダーシップの考え方の根底にあるものは、古来より、不変ではないだろうか。その根底にあるものは何か。それが知りたくて、本屋に出向いたら、一冊の本に出会った。その書籍は、「ビジネスの名著を読む リーダーシップ編(株式会社日経BP、日本経済新聞出版、2022年)である。この本を数ページめくってみると、単なるビジネスの名著を紹介しただけではなさそうだ。本の「まえがき」には、「本書の中では、こうしたカリスマ経営者ならではのモノの見方や、そのカリスマ性が発揮された経営判断の場面を題材として取り上げ、エクササイズに仕立てています」とある。これは面白いと思い、早速、拝読させていただくことにした。

    まず、目次を見ると、本書には、20冊のビジネス書が紹介されている。その中身は、デール・カーネギーの「人を動かす」や、サミュエル・スマイルズの「自助論」、スティーブン・コヴィーの「7つの習慣」や稲盛和夫の「アメーバ経営」、松下幸之助の「道をひらく」に至るまで、贅沢とも言える名著がずらりと並ぶ。そういえば、私の大好きなトム・ピーターズも登場する。かつて、私は、この20冊のうち9冊を読んだことがある。

    本書に登場するデール・カーネギー著の「人を動かす」は、PwC Japan 執行役常務の森下幸典氏が紹介している。本書では、「人を動かす3原則」から始まり、デール・カーネギーによる人を動かすための極意が森下氏の視点を踏まえて紹介されている。そしてケーススタディとして、「もし、上司が誤った発言をしたら」との質問が用意されていた。皆さんなら、この質問にどう回答されるのだろう。この回答は、「人を動かす」を何度も読んで見えたかたなら、すんなりとできるようになっている。このように本書では、ずらりと並ぶ名著の理解を深めるためにケーススタディが用意されているのみならず、20冊の名著を紹介する一流の経営者らがどのように読み、どのように理解し、どのように感じたのかといったことが理解できる。名著を紹介するカリスマ経営者の視点は、自分と異なっていたところもあり、さらに名著の奥深さを知ることになる。

    冒頭の引用文は、英国の作家、サミュエル・スマイルズが著した「自助論」からである。「自助論」といえば、「天は自ら助くる者を助く」という序文があまりにも有名である。この序文の印象があまりにも強く、精神論的な意味合いが強い書籍だと思いがちである。しかしながら、本書で「自助論」を紹介しているベイン・アンド・カンパニー・ジャパンの日本法人会長である奥野慎太郎氏は、「自助論」をビジネスへの活用事例を組み合わせ、分かりやすく解説してくれる。その中で、私が印象に残った言葉は、冒頭に引用した言葉だ。奥野氏によれば、「賢者の目は頭の中にあり」とは、「思慮の浅い人間には何も見えなくても、聡明な洞察力を持つ人、独力で活路を開こうと努力を続ける人は、目の前の事物に深く立ち入り、その奥に横たわる真理にまで達し、好機を手にできる(本書、92)」と言われます。

    私は、困難に出会ったとき、諦めるのではなく、しっかりと現実を見て、受け入れ、その出来事が起こった真理まで達したとき、解決策が見つかるといったことを過去に経験したことがある。奥野氏によって、自分の経験とスマイルズとの言葉を重ねたとき、私は「自助論」の理解がさらに深まったことを認識した。

    不安定でありながら、世の中のスピードが加速していく現代社会。しかし、私も改めて読み直したが、過去の名著には、不変とも言うべきリーダーシップの原則が根底にある。いつの時代においても変わらない一流の教えは、現代を生きる私にも有益なものであった。私は、これからの時代を生き抜く、新しいリーダーたちにこそ、本書をおすすめしたいと思った。

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著者プロフィール

コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社社長
1987年神戸大学経済学部卒業。大手銀行勤務、ウィリアム・マーサーを経て、2006年ヘイコンサルティンググループにディレクターとして入社。07年より現職。1991年ロンドン・スクールズ・オブ・エコノミクス(MSc)修了、92年シカゴ大学ビジネススクール(MBA)修了。

「2017年 『超ロジカル思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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