流域治水がひらく川と人との関係 [Kindle]

著者 :
制作 : 嘉田由紀子 
  • 農山漁村文化協会(農文協)
4.00
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 2
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (265ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 洪水という現象に対して漠然とした理解しかしていませんでしたが、流域治水の考え方を学ぶ中で理解が深まりました。また、2020年の球磨川の大氾濫を経て悲しい思いをした現地の方々、「球磨川は悪くない」と今も球磨川を大切に考えていることを知り、人と川の付き合い方について考える良い契機となりました。あとがきに登場する「洪水は一時、川の恵みは無限」という言葉もとても印象に残りました。以下は具体的に学びになった内容の抜粋です。

    流域=山に降った雨が集まる集水域と洪水の害が及ぶ氾濫域、治水=洪水に対する防御・利水(活用)・環境保護の観点で川と人が良い形で付き合っていくあり方と定義づけて、人が川の無限の恵みを得ながら、稀な災いも含めて共生していくことが重要と本書では書かれています。そのためには、ダム等の人工的かつ不自然な防御対策だけでは不十分・不適切で、むしろ過度な伐採や獣害で荒れ果てた山林を蘇らせて、山間部の保水能力など自然本来の保持機能を再生させ、氾濫域に暮らす人側も家づくりや住む場所選び、いざという時の協力体制など地域主体で川との付き合い方を日頃から練り上げ、山間部も居住エリアも含む流域全体で面的に「水を集めない」「早く流さない」「氾濫しても甚大な被害を出さない」体制作りをしていくことが必要不可欠です。また、これらの流域治水においてはIoTの技術で流域全体の面的なデータを集めることも重要と本書では書かれており、現在IoTを活用した山間部の防災や林業支援に携わっている身としては、直接・間接的に流域治水に関わり貢献できることが分かったことも良い気づきでした。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

参議院議員、元滋賀県知事、日本環境社会学会元会長、農学博士
1950年、埼玉県生まれ。1970年代初頭京都大学探検部員としてアフリカで水と環境の価値を発見。ウイスコンシン大学大学院・京都大学大学院修了。1970年代から琵琶湖周辺農村での水利用調査などを行い、1982年より琵琶湖研究所研究員として鳥越晧之たちと生活環境主義を提唱。1980年代中頃より琵琶湖博物館の企画・建設提案し1996年開館に結びつける。2000年より京都精華大学教授を経て、2006年公共事業の見直し・子育ての充実を訴え滋賀県知事に。「流域治水条例」を全国で初めて制定。2014年勇退後はびわ湖成蹊スポーツ大学学長。2019年より参議院議員。
編著書に『水と人の環境史』(1984年、鳥越晧之・嘉田編)、『生活世界の環境学』(1995年)、『水辺遊びの生態学』(遊磨正秀と共著、2000年)、『水辺ぐらしの環境学』(2001年)、『環境社会学』(2002年)、『生活環境主義でいこう!──琵琶湖に恋した知事』(古谷桂信と共著、2008年)、『知事は何ができるのか』(2012年)、『滋賀県発! 持続可能社会への挑戦』(内藤正明・嘉田編、2018年)、『命をつなぐ政治を求めて』(2019年)、『流域治水がひらく川と人の関係』(嘉田編、2021年)など多数。

「2022年 『水と生きる地域の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

嘉田由紀子の作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×