ストーリーが世界を滅ぼす―物語があなたの脳を操作する [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 本書を見かけて興味もあったが、スルーしていた。が、内田樹先生の成熟論の中で書評されていて俄然興味を持つ。合わせて、内田樹先生がこの書評で引用している『開かれた社会とその敵』もセットで読みたい。

  • ‘’物語が強い感情を生み出す。感情は物語の説得力の原動力である。強い物語はたいてい強い感情を生み、感情は私たちの懐疑心の溶媒として作用する。‘’ 良く出来(過ぎ)た物語を慎重に見る目を養いつつ、人を動かす為に物語の有効性を改めて。

  • ・メタに見てしまうと「物語が大きな力を持っている」というナラティブに囚われているのでは?と疑ってしまう。が、それも含めて作者の意図である「私たちの頭の中の物語についても同じだ。疑う癖をつけなければならない。」には沿う形にはなっているのだろうか。
    ・それぞれが自分自身の意思を持って「疑う癖をつけること」を希望と称する(と言わざるを得ない)本書を読んで、それを希望だとは到底思えなかった。結局人は信じやすい自身のナラティブに合致する物語をそれぞれの現象に見る。この本の主張を信じる人は「人々が事実を自身のナラティブに沿った認知をする」ということを認知するが、「信じたいことしか信じることができない」人へその認知を理解してもらうことはできない現実とどう向き合うべきだろうか。この本の「物語」を異なるナラティブの人に提示し「認知せよ」と宣教するべきなのだろうか。結局、信じたいことしか信じることができない人と、メタに認知することができる人の断絶を改めて確認する作業になった。
    ・批判めいた文脈で書いてしまったが、特にSNSを通じたデマ拡散とそれらと戦う医師・科学者の皆様と、それでも科学的な論拠を一切視界に入れない人々とを見て感じていたモヤモヤや無力感に対する一つの答えではあり、興味深く読み進めることができた。
    ・どうでもいいけど表紙と邦題のセンス…

  • つい最近レビューした本もそうだったけれど,ストーリー仕立てと言った場合は,大抵はわかりやすく伝えるための工夫だったりする。ストーリーにすることで知らない世界がもっと身近に感じられると思っていた。しかし,本書によれば,それが最近進んでいるという分断を煽っているのだという。といっても,ストーリー(テリング)は無くせば良いというものでもなく,著者によれば「私はストーリーテリングを人類に「必要不可欠な毒」だと考えている」なのだという。本書を読むと納得せざるを得ない。
    ストーリーを体験する中で,悪役が薄っぺらかったりすると,その分主役の思想が押し付けがましく感じてしまうことがあるのだけれども納得がいく。物語空間全体ではなく,その中の主張がダイレクトに強くアピールしてくるからである。一方でストーリーを作る側から見ると,複雑なものを単純化して,誇張してわかりやすくするのは常道である。テンプレ的なキャラは自分の頭の情報量が少なくて済むので読み手にわかりやすい。受け手が受け取れる情報量には限りがあるので,そこで届ける情報を選別するのは作者側の腕の見せ所になってくる。何回か読んだり,時間を空けたりすることで,受け取れるものが変わる場合もある。これは生態系の豊かなストーリーランドである証なのだと思う。
    逆に,困ることもある。時々,ストーリーが頭の中をぐるぐるしていて,頭から離れない時がある。その現象について本書の言葉から引用すると,「意味が腑に落ちるまで、物語が私たちのもとに(あるいは私たちが物語のもとに)とどまる」ということだったりする。どういうことなのか自分なりに理解ができたときや,自分に対してのフィードバックとして受け止めることができたときに落ち着く(昇華される)。これはわかりにくい場合に発生するのではない。考える価値があるときに発生するもので,大切にしたいストーリーと対峙したときにのみ起こる。
    ところで日本のストーリーには,特にサブカル界隈には,敵と味方を超えた世界をもつものが少なくないと感じている。例えば,JRPG(もう古いか…)の中には作品世界の中でいろいろな立場を追体験できるものがあったりした。例えば,「ドラゴンクエスト」では敵であるモンスターも人気があり,なんと仲間にもなったりもする。現在主流の正義のはっきりしたひとつの視点でしか進められないワールドワイドなゲームか自分の視点でしか進められないソーシャルゲームとは違った世界が広がっている。ゲーム以外で最近感心したのをひとつ挙げると,悪徳(悪役)令嬢がカテゴリーと言っても良い広がりを見せていること。だって「悪」って言っちゃってるんですよ。
    その他にも興味深い指摘が多いのだけれども,最後にひとつだけ。「私たちは一日に何時間もテレビの登場人物とのバーチャルな社交に没入する一方で、家族や友人とは平均40分ほどしか交流しない」ということ。確かに。それは家族とのつながりよりも登場人物とのつながりのほうが深くなって当たり前だと思う。それは家族が確かに勝てるわけない。納得しかない。時間をかけて呼んだ甲斐があった。

  • ナラティブに抗うことはできないが、それを意識し続けろということと理解した。

  • 面白かった
    年に一回はヒューム的な本を読みたくなる

    装丁をもっと書いたくなるものにしてほしい

  • 問題提起的な本。
    人間は物語によって思考が支配されている、といった旨の内容。
    著者自身も言っているが、科学的な研究はまだ十分になされていない。
    しかし仮説としてはとても同意できる内容。
    今後の科学的研究の進捗が楽しみな分野である。

    それと同時に、ストーリーテリングのスキルは今後磨いても良いと強く思う。

  • NDC10版
    361.4 : 社会学

  • 本書は主張内容が一貫しており大部分が肉付けであるため冗長にも感じたが、人がなぜストーリーを必要とするのか、ストーリーの基本構造、SNSが分断を産んでいる状況など納得させられる部分が多かった。陰謀論だけでなく伝統的な宗教も同列に扱っている点や、自身の所属する学術会の偏りについても触れている点で印象がいい。道徳性と、どんなストーリーが支配する世界で生きているか、経済的に恵まれているかという運についての記述も印象的だった。”私たちは一般的に、道徳性とは運ではなくその人の生まれつきの性格から生じるものと考えて生きている。”この部分は特に均質性の高い日本人に強く当てはまるように感じた。

  • 「真実が最も優れたエビデンスの裏付けではなく、最も優れた物語ーあるいは最も力のあるものが後ろ盾となっている物語ーを基準に決められる、夢の国に入りかけている。」

    私たちはそういう世界に生きている。

    「どんなにいかれた物語を信じていようと、本物のエビデンスらしく見える山ほどの情報で裏付けを得られる世界なのだ。」

    グローバルダイニングの長谷川社長は小池百合子に対して毅然と立ち向かい勝利し、福島雅典医師は厚労省の役人をピシャリと叱りつけた。世界を平気でバラバラにしようとする人間に、力強い理性で立ち向かえるかどうかが問われている。

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著者プロフィール

ジョナサン・ゴットシャル
ワシントン&ジェフーソン大学英語学科特別研究員
ジョナサン・ゴットシャル(Jonathan Gottschall)
ワシントン&ジェファーソン大学英語学科特別研究員。著書にニューヨーク・タイムズ紙エディター選に入った『The Storytelling Animal』(未邦訳)、ボストン・グローブ紙のベストブック・オブ・ザ・イヤーに選出された『人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教師がリングに上がって考える』(松田和也訳、青土社)がある。ペンシルヴァニア州ワシントン在住。


「2022年 『ストーリーが世界を滅ぼす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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