職業としての官僚 (岩波新書) [Kindle]

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  • 人事院審議官まで努め京都大学公共政策研究員大学で教授をつとめる著者による公務員制度の変遷に関する分析、あるべき姿のエッセイ。1986年との現行制度の違いを多面的に分析しているが、「これだけ良くなったのか」と感心してしまう一方で、それでも国民から見て魅力的に映らない官僚制度が課題山積であることを暗示している。中段以降では、英米独仏の4カ国の公務員制度との比較を通じ、日本の官僚制度の特徴として3点をあげている。①牽制不在の政治的応答の突出、特に内閣人事局ができてから官僚人事権を背景として権力への直言が行われにくくなっている、②官僚の無定量への働き方への依存、国会答弁作成が官僚に丸投げされているのは日本だけであるという特殊性、③人事一任慣行による萎縮、人事当局が職能主義により一方的な人事配置を行うことに加えて、内閣人事局ができて幹部が忖度の対象がこれまでの各省次官から総理と官房長官へ移ったこと、政治主導で内閣人事局ができたのに、公務員制度改革法令でうたわれていた政策決定過程の記録公開と人事配置理由の国民に対する事後説明が店晒しにされており、透明性を大きく損ねる制度になってしまっている。ということである。巻末では、公務員官僚のこれからに向けて、①公務員としての生きがい、②行動規範たるべき正しさ、公益とは、③官僚を突き動かす職業人生を突き動かす力、守護霊(デーモン)の存在、そして④国民が官僚を理解し寄り添おうとする支援が約束されること、を処方箋としてこれからの社会に委ねている。

  • 官僚の立場から、官僚のこれまでと現在の状況を網羅的に書いてくださっていると、何も知らない身からは見えました。
    官僚という言葉はハイコンテクストすぎて幻獣のような扱いを受けているように思われ、筆者の人としての官僚を意識することで現状の困難さを理解することの大切さを感じました。
    少なくとも官僚は職業なのであって、官僚という人間ではないのだという視点の重要性を見ました。

  • 20230115- 0202自分はいわゆる官僚ではないと思う(まあ国の「職員」)。とはいえ(国家)公務員改革はもちろん他人ごとではなく、制度の変遷を身をもって体感っしているといえる。各国比較はもちろん我が国の制度の参考にはなるが、官僚制度は各国の国政と成り立ちに大きく左右されると思う。たとえば政治任用が多い米国の制度はそのまま我が国に導入することは難しいだろう。
    「労働市場で他にいくらでも選択肢がある中で、特段の処遇や威信も与えられないのに、絶対的君主(=政治家?)の「家臣」となる道をあえて選ぶ者はいない。」
    ↑著者の思いがあふれているような気がする。封建時代の「御恩」と「奉公」じゃないんだから、あえて「家臣」になりたがるのはよほどのMということになりはしないか。

  • 詳細過ぎ、読解やや消化不良気味。阿部二次内閣以降の上級官僚人事権の変更に伴う、官邸主導の官僚組織の変化を追う濃厚な力作か?

  • 日本の官僚のインタビュー、英仏独米との比較など大変におもしろい本である。若手の段階から、民間と官僚の行き来、せめて協業ができるようにすべきだろうな。

  • 【着目すべきは、「職業としての合理性があるのか」、すなわち「職責と処遇との適切なバランスが取れているか」という点にある】(文中より引用)

    様々な改革案が試されてきた官僚制度。歴史的な沿革も明らかにしながら、今求められる処方箋について検討した作品です。声高な「改革」ではなく、地道に現場レベルから積み重ねられる「改革」が求められる段階に来ていると感じました。著者は、人事院人材局審議官等を歴任した嶋田博子。

    他国との比較例は非常に参考になりました☆5つ

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