新しい階級闘争―大都市エリートから民主主義を守る [Kindle]

制作 : 中野 剛志 
  • 東洋経済新報社
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  • 「新しい階級闘争闘争」のこの階級闘争とは新自由主義により資産を増やす都市エリートが民主主義を壊し、自分たちの意思決定のみで社会を動かそうとする都市エリートと地方都市を拠点に生活する中産階級や都市労働者との対立である。
    第二次大戦中から戦後、両階級の和解と妥協、そして社会のシステムとして様々な参加型の中間団体が機能することにより、国民の多様な意見や要望が政治に反映されていた。その結果、社会的格差は小さく、国民国家としても安定した時期が続いていた。このような政治を著者は「民主的多元主義」と呼ぶ。しかし、やがて、このような現状に多くの不満を持つ都市エリートが反撃に出る。彼らは新自由主義的政策により富を蓄積していったが、これを一気に加速させたのがグローバル化である。特に経済における国境を自由に跨いでの活動は都市エリートに大きな利益をもたらすが、中間層や労働者には何のメリットもなく、力を削がれていくばかりであった。これにより社会の分断化が進んでおり、中間団体の影響力の喪失からいわゆる労働者、貧困層はその不満を託す組織を失ってしまっている。その彼らの支持を一時的に集め、現在躍進しているのがポピュリズムである。アメリカのトランプやイギリスのジョンソン、フランスのルペンが勢いを増したのはその典型例である。
    ポピュリズムには大衆を惹きつける力はあるが、この社会的問題を解決していく能力はないと見て、著者はやはり「民主的多元主義」を実現でくるような社会制度の復活を主張する。そのためには行き過ぎたグローバル化を見直し、国民の利益あってのグローバル化が大切であると見る。
    元々、社会的な仕組みが大きく欧米諸国とは異にする日本であるが、様々な面で共通する現象も見られるので、昨今、貧富の差が広がり始め、社会的分断も見え隠れする日本にとっても大いに参考となる著書である。

  • 20231208ー1221 夫から借りた。このところ、必ずしも自分の趣味嗜好に合致しているとは言えない本ばかり読んでいたので久々にすんなり読めたと思う。筆者はあくまで欧米の先進国市場経済の中で社会の分断が生じている、と述べているが同様の危機は日本にもあてはまるだろう。おそらく(欧州はよくわからないが)米国のほうが文化の分断は深いのではないだろうか。

  • 「資本家」対「労働者」から「大都市エリート」対「土着の国民」になってること。
    そして左右ではなく「上下」対立の時代になってることを説いていて、ポピュリズムに関しても現象と書いてるのが印象に残りました。
    対策としては庶民層の利益や見解を代弁し、政治に反映させる拮抗力が必要なため、労働組合など様々な中間団体を再生させる必要があるなのですが、これは一概にいい方向にいくかというと微妙な感じもします。

  • 本当の意味でのリベラルを感じる所でもある。決してトランプを肯定しているのではなく、否定的な情報だけでなく、事実を淡々と述べている所などは特に。確かに右と左の時代ではない。どちらかと言うと現実的か非現実的かの二分化の様な気もする。時間を空けて再読したい。

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著者プロフィール

マイケル・リンド
テキサス大学オースティン校リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院教授
テキサス大学オースティン校リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院教授。ワシントンDCにあるシンクタンク「ニュー・アメリカ」の共同設立者でフェロー。ニューヨーカー誌、ハーパーズ・マガジン誌、ニュー・リパブリック誌の編集者、スタッフライターを歴任。ニューヨーク・タイムズ紙、フィナンシャル・タイムズ紙、ポリティコ、フォーリン・ポリシー誌、インターナショナル・エコノミー誌などに寄稿。ノンフィクション、フィクション、詩など、多くの著作がある。

「2022年 『新しい階級闘争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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