「幕府」とは何か 武家政権の正当性 NHKブックス [Kindle]

著者 :
  • NHK出版
3.43
  • (2)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 24
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (381ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 武士の政権が武力だけでなく正当性を確保しようということを書こうとしたもの。特に京都への飢饉の対応が定点的に時代間の差を示すために取り上げられている。法の支配や合議性、救民など多岐にわたり、様々なことが書いているが、広汎に過ぎてわかりにくいように思う。
    一旦政権を取れば正当性を欲することは当然だが、ずっと天皇がイタ日本の歴史では幕府は最後はモンクがあるなら腕力で来いということではなかったかと思う。
    足利政権は第二王朝を目指した節があるが、北条政権と徳川幕府は最後は武力という政権だったというイメージ。

  • 歴史書とか読んだことないんだけど、本屋で衝動的にジャケ買いしました。

    歴史は教科書的な事項すら怪しいワタクシですが、幕府の権力の源泉は何か、その正当性(正統性)をどうやって維持していくのか、というあたり、色んな観点での話があって興味深く読みました。特に、物流がキーだったと理解しましたが、当然ながらこういう話は中学の歴史では習いませんでした(高校は日本史選択せず)。まあ素人のワタクシでもさすがに将軍宣下を受ければそれで幕府成立、めでたしめでたし、とは思いませんが。

    ところで、歴史書とか読むの初めてなのですが、他人の研究の批判が随所にバシバシと書書かれていて、「こんなに他人の研究を批判して恨みを買わないのかな」とハラハラしてしまいました。そっちが気になっちゃって本題がなかなか頭に入ってきませんでした。歴史研究者ってこういう文化なのでしょうか。

  • 武家政権の誕生からその展開の諸相を、広い視野で分析した本になります。
    ただし、権威の傘に隠れてそれ以外の歴史学者を睥睨することで自説の正当性を主張するロジックで、かなり傲慢な物言いが散見されるので、読む人を選ぶでしょう。

  • 正当と正統という言葉から書き起こし、政権の正当性を軸に近世を睨み、それを資料を博捜することで裏付けていくところが爽快だった。

    多くの研究史によって裏付けられた歴史学の重さに触れることができた。

  • ふむ

  • ===qte===
    「幕府」とは何か 東島誠著 武家政権 支配の正当性問う
    2023/3/4付日本経済新聞 朝刊
    易姓革命や市民革命の伝統を持たない日本人は、施政者の理不尽に対してかなり我慢強い。だが、どれほど強力な政権であっても、力のみに依拠して支配を続けるのは難しい。著者が「幕府とは何か」と問う真意は、暴力や強権の行使に最も近いところにいるはずの武家政権が、いかにして支配の正当性を確保したかを明らかにするためである。その歴史的問いかけは、すぐれて今日的な問題意識と表裏一体になっている。


    本書は「幕府」について、鎌倉幕府成立以前から、江戸時代までをカバーするが、一般的な通史とは異なるアプローチをとって進む。「幕府」という用語や中世国家論など、歴史を論ずるための概念・分析のための理念型を詳細に検討し、幕府をめぐるさまざまな研究者の主張に、容赦のない腑分(ふわ)けを加えていく。

    著者は、政権の本質を「都市王権」と考える。そして、都市が飢饉(ききん)や災害等に襲われた際の政権の対応を追うことを通じて、その支配の正当性を検証しようとする。そのような悲惨や危機を引き起こす気候の長期的変動も大きくとりあげられる。

    京都は、生産地の豊凶とは別に、流通の不全によって飢饉が発生する「簡単に飢える消費都市」であった。流通問題を解消するためには武力に頼らねばならない。海賊や悪僧の跋扈(ばっこ)も厄介だが、戦乱による兵糧米の奪取等に遭えば脆弱な都はひとたまりもなく、公家政権は源頼朝の地頭設置を受け入れざるをえなかったのだという。

    本書の中盤には、12~17世紀の歴史の動態を示す図が置かれている。生産条件・都市の状況・武家政権の性格・国際環境等の要素を入れ、14世紀の民族史的転換・15世紀中葉の物流主導型都市の成立を画期とし、その後は中世から近世への衣替えの期間とみる。著者の歴史観の総譜といえるものだ。著者自身はこれを現代音楽の楽譜にたとえているが、なるほど予定調和に流れず、不協和音を恐れず、越境的である。

    次々と提示される多様な切り口は、時に恣意的にも感じられるが、即興の妙というべき魅力がある。激甚災害や感染症の時代に生きる私たちが、「正当性とは何か」を主体的に考えるための力を与えてくれる書物だろう。

    《評》日本中世史研究者 本郷 恵子

    (NHK出版・1980円)

    ひがしじま・まこと 67年大阪府生まれ。立命館大学教授。専門は日本中世史、日本社会史。著書に『公共圏の歴史的創造』など。

    ===unqte===

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

立命館大学教授。1967年、大阪府生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻博士課程修了、博士(文学)。著書に『公共圏の歴史的創造――江湖の思想へ』(東京大学出版会)、『自由にしてケシカラン人々の世紀』『〈つながり〉の精神史』(ともに講談社)、『日本の起源』(與那覇潤と共著、太田出版)など。

「2023年 『「幕府」とは何か 武家政権の正当性』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東島誠の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×