母の友2023年5月号 特集「絵本はきっともっとおもしろい」

制作 : 「母の友」編集部 
  • 福音館書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (84ページ)
  • / ISBN・EAN: 4910075110534

感想・レビュー・書評

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  • 見返しの「編集部より」の、
    『絵本はおとなが子どもに読むもの』といった、
    母の友を発行する福音館書店の基本姿勢の理由が、子どもにとって信頼できるおとなに読んでもらう体験は、かけがえのないものだからに深く共感し、
    また、南米の作家ボルヘスの、少年時代に父が本を朗読してくれた時の姿と声を六十年後も思い出せるエピソードには、読み手を母に限定しない、『信頼できるおとなに』読んでもらうことが大切な思い出となることを知りました。


    まずは、気になったコーナーを色々と。

    川内倫子さんの写真「五月の光」。
    光を可視化できる喜びを改めて実感するとともに、それが若葉にも届いている様子が、よく分かる。

    長田杏奈さんの「わたしのきれいは私が決める」。
    『美容に花に動物と、私が愛でるものは、戦争になったら真っ先に「無駄」と切り捨てられるようなものばかりだ』と、男性のペディキュアの自分のための小さなおしゃれに、『古めかしく威圧的な「男らしさ」の武装から一抜けたように見えて好もしい』が印象的。美容は平和の証でもあるのだな。

    高井祐子さんの「心のセルフケア」。
    「相手が挨拶を返してくれなかった」時に、イラッとしたり悲しくなることに、私も同感の思いがした。
    しかし、これは相手がしてくれることを前提に考えてるから、そう感じるのかもといった感情(あくまでも私の場合)が、その人自身の考え方や捉え方、つまり『認知』からやってくるのであって、怒りは相手から作られるのではないとのこと。理屈では分かるような気がするけれど、何かまだモヤモヤは晴れない。次回も読もう。

    「読んであげるお話のページ」は、
    宮古島の昔話、「パリのカマド」。
    伊野孝行さんの切なくなるような夕暮れの絵も印象的な中で、日常が当たり前にあることの幸せを、二つの長い影が実感させてくれる。

    スズキコージさんと鬼頭祈さんの絵本作家対談、
    「解放区」(後編)。
    コージさんの好きな言葉“解放区”にあった、画業を絵という限られた表現の中だけで終わらせてしまう気はなく、人生全体でそれを表現したいこと、それは大自然に溶けていくようなことである事や、自分一人でいても喜びに満ちている人間になるよう自分でもっていくという事に、とても感銘を受けた。

    「えほんのきほん」。
    赤ちゃんへ絵本を読ませるのは、個人差もあるが、生後十ヶ月ぐらいから可能だそうで、同じページで反応したり、擬音にキャッキャッと笑ったりするなど、想像以上に楽しむ様子が見られるそうです。

    安田菜津紀さんの「わたしのストーリー」。
    父のルーツから見えた、ヘイトの根深さが読んでいて、とても辛く、父の生家跡からほど近い場所にあった、「京都朝鮮第一初級学校」に於いての、2009年12月から三回に渡る、「在特会」メンバーらによる言葉の暴力や、最近では、2022年10月東京都の電車内で、50代前後の男性が、朝鮮学校中級部の生徒の足を踏みつけ暴言を吐いたそうで、この日はJアラートが発出されたらしいが、あまりに思考能力の欠けた感情的な行動にため息。そこにいた生徒がアラートと何か関係があるとでも、本気で思っていたのだろうか?

    小川たまかさんの「自由のほうへ行くために」の、
    『ネグレクト』も辛い。
    大人たちが抱える不安や鬱屈は、家庭内で子どもに向けられて、社会が傾いていくとき、そのしわ寄せを最初に受けるのも子どもで、その被害内容は、「家」の壁をさらに厚くした政治家たちによって、表に出ないように見えて、軍事費や憲法改正ばかりに熱心な彼らが、国内の子どもをネグレクトし続けているの言葉には、何故、こうした事態を野放しにしているのか、もっと重大事として考えるべきではないのかと思わせる、絶望感があった。


    そして特集は、「絵本はきっともっとおもしろい」

    まずは、谷川俊太郎さんのお話で印象的だった、
    『絵本は教育的な機能を持つと考えられがち。言葉の意味や定義、つまりセンスだけではなくて、“ノン・センス”意味がない部分がとても大事』には、よく分からないけれど面白いといった、子どもならではの素直な感性が捉えたものの大切さを実感。

    また、子ども自身の絵本に対する考え方も印象的で、例えば、「こんな絵本があったらいいのにな、って思う絵本はある?」の質問に対して、『あかちゃんとおねえちゃんがこわがらないえほん。だってこわがりのひともいるんだよ』という答えには、既に、世の中にはいろんな人がいるから、絵本もいろんなものが必要であることを分かっているように感じられて、すごいな、この子と思う。

    それから、植垣歩子さんの『子ども時代の日々の安心感、明日が楽しみだった気持ち』といった、その頃の経験が大人になっても心の支え、生きていく糧になっている事や、きくちちきさんの『動物や子どもを見ていると、100%で生きるってそういうことかと、考えさせられます』には、それぞれ絵本作家をされている思いの拠り所を感じられて、それが絵本の素晴らしさを語っているようでもあるのが、また良かった。

    そして、私が最も印象深かったのは、
    鼎談・伊藤葉子×おくやまゆか×中藤智幹
    「一生の友だちとなる一冊に出会うために」であり、
    それぞれ、保育士、マンガ家・童話作家で図書館に勤務、児童書専門店店主です。

    まずは、大人と子どもの絵本に対する価値観や認識の違いであり、大人は理解できるものの方が安心できるけど(お勉強的に社会問題を伝えるものなど)、子どもはその面白さに身を任せてくれる違いから、『当事者は子どもでも、買うのは大人。そのねじれが児童書のやっかいなところ』といった、致命的な部分まで、広く問題視されており、例えば、多様性を教えてくれる本を買わなくても、そもそも絵本そのものが多様性を感じさせてくれるといった、絵本に対する認識を大人が改めるところから始めるべきなのではないかと、言っているようにも感じられた。

    さらに、『大人は絵本で大事なものって、本の中身、情報だと思っているけれど、子どもにとって大事なのは絵本そのもの』という言葉に、そういえばと幼い頃を思い出す私がいて、確かに子どもというのは、何故か同じ絵本を何度も読みたがり、幼稚園に行けばあるのに家にも欲しいと言ったりして、それについての答えは、『それは電子書籍では味わえない所有する喜びで、ぬいぐるみ的な愛着でもある。だから子どもは何回も借りたいし読みたいし』や、『大人が好きな音楽を何度も聴くのと同じ』に、なるほどと思い、これは私も未だに同じ気持ちで、本当に読みたいものは手元に置いておかないと気が済まないし、それをただ、手に取って眺めているだけでも幸せを感じたりする、そんな自分の分身のようなかけがえのない喜びが、常に側についている事で、きっと生きていく励みにもなるのであろう。そんなかけがえのなさが絵本にあることを、改めて実感できたことが私には、とても嬉しかった。

    そして最後には、書店・図書館・園でいい循環ができたらという言葉で締めており、それらを上手く活用することで素敵な絵本ライフを過ごせることを知り、今後も絵本を生きる糧にしていきたい気持ちが、ますます強くなるのを感じさせてくれましたし、改めて、子どもとの絵本の関わり方を知る上でも、良い特集だと思います。

  • スズキコージさんと鬼頭祈さんの対談が面白い。鬼頭さんの質問に親近感覚え真摯に答えるコージさんを尊敬。安田菜津紀さん小川たまかさんの話は心苦しくなったが忘れてはいけない。コウケンテツさんとひょうひょうかあちゃんほっとする。

    • たださん
      111108さん、お返事ありがとうございます!

      スズキコージさん、絵柄から、ちょっと、楳図かずおさんを連想したのですが、絵本だと、また違っ...
      111108さん、お返事ありがとうございます!

      スズキコージさん、絵柄から、ちょっと、楳図かずおさんを連想したのですが、絵本だと、また違った印象を受けるかもしれないので、とりあえず、読んでみようと思いましたが、対談やインタビュー等で、新たな一面を知ってからでも良いですよね。

      なるほど、同時に借りるという手もありましたね♪
      前回は4月号が貸し出し中だったので、今回はどうか、ちょっと気になりますが、またネット予約してみようと思います(^^)
      2023/05/02
    • 111108さん
      たださん

      梅図かずおですか!独特のパワーが似てるのかもですね。私はなんとなくラテンアメリカの印象でした。パワーが強すぎて怖かったのかも。怖...
      たださん

      梅図かずおですか!独特のパワーが似てるのかもですね。私はなんとなくラテンアメリカの印象でした。パワーが強すぎて怖かったのかも。怖くなければ絵本からでも大丈夫だと思います(^^)
      予約すぐできるといいですね♪
      2023/05/02
    • たださん
      111108さん、おはようございます。

      ラテンアメリカの印象、分かるような気がします。あちらの文学の幻想的妖しさといいますか。
      111108さん、おはようございます。

      ラテンアメリカの印象、分かるような気がします。あちらの文学の幻想的妖しさといいますか。
      2023/05/03
  • 絵本好きにとっては、たまらない企画。
    大人が楽しんでいいんだ!子どもが聞いてなくても、気にせず読んでいていいんだ!
    大人が楽しんでいるのが1番だよね。

    保育士さん、図書館員でもある作家さん、児童書専門店の店主さんによる「絵本選び」に関する対談は、おぉ!と思うことが満載だった。

    子どものおかげで知ることになった絵本も、絵本作家さんもたくさんできて、こんなに絵本が好きならなんでそれを仕事に選ばなかった…?と思っていたところに、諏訪部順一のエッセイ。「いま歩んでいるこの道こそが最良の選択」…たしかに、そう思うと心が晴れる。

    今号も実りのある1冊だった。
    子どもに読み聞かせ、と言いつつ、図書館の新刊本を借りるたびに自分が楽しんでいるけど、自信を持って「これでヨシ」と続けていこう。
    読んでいると、子どもも寄ってきて眺めてはいる。一緒に楽しめるものがある、ってけっこう幸せなことなのかも。

  • コウケンテツさんのエッセイがよかった。日本育ちで韓国語が話せないことについてあっけらかんと書いているが、いろいろなコンプレックスを乗り越えてきているに違いない。
    森田真生さん「かずをはぐくむ」と、もりやままなみ・齋藤陽道「ひょうひょうかあちゃん」もよかった。手話か音声かによらず、疑ったり思い込んだりしないでとにかく話をよく聞くのはほんとうに大事。

    絵本作家対談スズキコージ×鬼頭祈は4月号の続き。先輩絵本作家は頼もしい。

    特集の「絵本をめぐる鼎談」で、現在の社会問題を反映したSDGsや多様性をテーマにした作品が多く出ていることへの違和感が語られていて、まさに、と思った。本質的に多様でまだ型にはめられていない幼子に必要なのはなにか別のものだろう。

  • 全体的には面白かったです。
    スズキコージさんと鬼頭祈さんの対談がありますが、後編です。

    途中から購入する方や、特集が気になって購入する方にとっては、え…前編どこ?となるので、インタビューとかは前後編で分けないでもらえるといいなと思いました。

    コウケンテツさんのエッセイも面白く、作家(図書館勤務)と、保育士と、書店店長の対談はいろんな立場から見る絵本と親子の関係などが読めて面白く読み応えがありました!

  • 怒りは自分の認知からくるもの。 高井祐子さん

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