『ラブカは静かに弓を持つ』ロングセラー記念ガイドブック（試し読み付） (集英社文芸単行本) [Kindle]

著者 : 安壇美緒

• 集英社 (2022年5月2日発売)

感想・レビュー・書評

[niroさんの感想 · 2023年7月14日]

無料小冊子も登録できるんだ！？

本編で主人公が潜入調査をすることになる音楽教室の、チェロ講師視点の話。
軽妙で、かといって崩しすぎていない文体。まさに堅すぎず柔らかすぎないといった感じで、難しい単語や言い回しもなく、かなり読みやすいと感じた。視点人物が「陽気で人当たりがいい」から、もあるのかな？

↓以下、本編の試し読みの感想。

スペシャルSSが浅葉の一人称だから、本編は橘の一人称かと思っていたから三人称でびっくりした。どっちも書ける人なのか。
「何歳までチェロを弾いていたか」「弾くのは何年振りなのか」を書くことで橘の年齢を浮かび上がらせる手法がうまい。（ここまで読んだだけでも、スペシャルSSと合わせて浅葉の年齢もわかる）

無料小冊子を読んだだけではタイトルの意味はさっぱりわからなかったが、「深海」という言葉が出てきてようやくつながる道筋が見えた気がする。（斉藤壮馬のコメントに「深海」はあるけど「〜ように」と続くから、例えかと思った）

先日読んだ太宰治の『断崖の錯覚』は導入部の短い文でガツンと続きを気にならせる（犯罪者って何！？）ものだったが、こちらの導入部はゆっくり時間をかけて続きを気にならせる（チェロを弾けと言われただけで、橘がどうしてこんなに動揺しているのか。その理由はなんなのか）という印象。