なぜ男女の賃金に格差があるのか [Kindle]

  • 慶應義塾大学出版会
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感想・レビュー・書評

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  • 男女の賃金に格差があることは有名な事実。
    それに対して大体の人は、なぜ?とは思うし、それにこれかな?、そしてこうすればいいかな?という曖昧な考えはあるけれど、具体的な結論はない。
    この本は、その疑問に対して、統計を元にした客観的な視点でわかりやすく事実を示してくれる。また、さらに「どうすれば均等になるか」の実際の具体例まで示してくれるので、とても有益。

    上記の疑問について、なぜ?の答えは、家庭(とりわけ子供)に関する作業を女性がすることが多いため。なお、それには出産も含まれる。

    もちろん、家庭に関する作業(例えば保育園からの体調不良での呼び出し)に、必ずしも女性が応じなければならないわけではない。
    けれど、女性は出産のためにキャリアに空白があり、その時点で配偶者と比べて給与に差がついている場合が多い。
    そうすると、対費用効果的な意味で、賃金の低い女性のほうが応じることが多くなり、その繰り返し…という形で差が開いていく。

    これらのような理由で、女性は男性と比べ、労働者としてのキャリアを積みづらい。また、仕事のオンコールに対応できなくなると、労働的な付加価値が得られない。

    それに対し、どうすれば?については、薬剤師のデータがヒントとして挙げられている。
    薬剤師は男女の給与の差が少ない。理由としては、薬剤師は個人のタレントに頼らず、比較的スタッキング可能な職種であり、給与は平均化されやすい。また、オンコールの必要性があまりなく、資格職のためキャリアの空白があっても就労しやすい。

    だからといって、この本はすべての仕事が薬剤師と同様の形を目指そう!という趣旨ではまったくない。とても客観的。表題からフェミニズムを感じる人もいるかもだけど、論調はとてもサラッとしている。

    本の主題や結論は上に示したけれど、個人的にすごいなぁと思ったのは、ここ一世紀で「働き続けてきた」女性の数々。皆、自己実現のための強い意志を持って、自分のキャリアをどう積むかをという問題に試行錯誤してきた。
    そのおかげで、私達が今、育児と仕事を両立したいという希望に社会的な理解を受けることができるし、出産のコントロールに関する医療的な面でも恩恵を受けることができている。

    同じ女性として(というとちょっと大きなくくりで申し訳ないけれど)、偉大な先輩方の背中を見る思いで、仕事を続けていく勇気が出る。
    そして、そんな気持ちになれたのは、統計と個人のエピソードの繰り返しで表現してくれた著者の技量のおかげ。単なる統計では味気なく、エピソードのみでは個人の場合にとどまるので…とてもちょうどいい塩梅。
    こういうレポート的な本を読んで、私も頑張ろう!と思うのは不思議だけど、それも含めていい本だった。

  • チャイルド・ペナルティ:出産すると罰を受ける。収入低下・弱い回復。

  • SRHRの実現には女性の経済的自立が必要だと思って読んでる。

  • 日本語タイトルから期待される内容はもっと深みがあるのかと思ったら、一般的によく知られているような内容で少しがっかり。日本語タイトルと内容が合っていないと感じた。英語タイトルはwoman's century-long journey towards equality で、これならタイトル通りの内容です。

  • スコープは大卒キャリア女性で、私自身も医療、パブリックセクター、コンサルティングといった業界で女性がキャリアと家庭(より具体的にいえば育児)とのバランスで苦しむのを常に見てきたので、この本の記述(例えば長時間労働やオンコールのプレミアム)は納得感があるし、おそらく先進国では共通する問題なのだろうと思う。
    最初の女性のキャリア史の5フェーズはやや記述がわかりにくかったが、後半は面白かった。
    終盤に好事例の一つとして示唆されるのは、夫婦の双方がキャリアを交互に追求するようなパワーカップル、あるいは女性のほうがキャリアが"強い"夫婦(例えばカマラ・ハリス)であるが、それはそもそも結婚の上昇婚・下方婚といった男女それぞれの価値観の問題も強く影響しており、男女賃金格差の問題が政府や企業、社会制度がアドレスしにくい領域に入りつつあるように感じた。

  • 原題より女性のキャリア100年史。
    ずっと家庭かキャリアかどの順番か両立かが問われてきた。
    賃金格差やチャイルドペナルティなど統計的な数字からあらわにする。
    ここから見えてくるのは時代が家庭も仕事もを求めているといえる。
    男性も子供とそれも幼少期の子供と過ごす時間を確保したい時代。
    企業にとっては外部環境変化にどう時間で応えるかの時代になってきている。
    女性の観点から積み重なったこの問題を社会としてどう迎えるのか今まさに問われていて示唆に富む内容。

  • 電子ブック(MeL)
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000147207
    ※学外で利用するときはSSOにログインし、学認を選択してご利用ください。

  • 研究者が書いた論文のような内容になっているため、データが多く、難易度が高かった。
    1つ1つのケースから導く結論には納得できたものの、タイトルの問いに対する答えは斜め読みしただけではわからなかった。

  • ノーベル経済学賞が発表されてすぐ図書館に予約した

  • 家庭と仕事の両立を追求する共働き夫婦だが、あまり目新しい情報はなかった。
    医師や弁護士、コンサルタントなどいつ呼ばれても対応できるよう待機している職種「貪欲な仕事」は給与が高く、女性はそのような仕事を選んだとしても、早いうちに辞めるか、急遽の呼び出しがない代わりに給与が数割減のコースに転換するケースが多い。薬剤師や顧客を共有する銀行担当などは、専門性が高くても男女の賃金差が少ない。
    今はそこまで残業や急な対応がない仕事であり、あまり貪欲さは求められない。ただ貪欲な人、常に会社にいる人の使い勝手がいいこともわかる。
    同じ会社で、夫の学歴が高くても、出世が早くても、自分が続けたければ、妻だからと言って自分が家庭を優先する必要はないと感じた。常にトップを走らなくても、いくらでも挽回はできるはず。ただ気持ちで引いてしまいがちなのは女性というのもわかる。

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著者プロフィール

ハーバード大学ヘンリー・リー経済学教授。経済史家であり労働経済学者。研究テーマは、女性の労働力、所得における男女格差、所得不平等、技術革新、教育、移民など多岐にわたる。2013 年にアメリカ経済学会会長、2000 年に経済史学会会長を務める。米国科学アカデミー会員。著書The Race between Education and Technology(L・カッツとの共著)で、2008 年R.R. ホーキンス賞を受賞。マサチューセッツ州ケンブリッジ在住。

「2023年 『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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