- Amazon.co.jp ・電子書籍 (170ページ)
感想・レビュー・書評
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乗代氏の文体にしては硬くなくうんちく系のパートもないので読み易いが、個人的に出だしの語り口調からどうも鼻につき、不安を感じながら読み進めた。読んでいくにつれ、登場人物達のキャラクターに慣れ、中盤から終盤にかけては熱い物を感じた。子供から大人へと変わる真のモラトリアムである年代の若者とそこに関わる大人と呼ばれる人達。乗代氏の作品に出てくる大人、特に男性はどこかしら知性と品を兼ね備えながら、鬱とした影を持つ。青い影とでも言おうか。とても魅力的で居心地の良い安心を与えてくれる。そして若者の計り知れない可能性に涙しそうになる。
清々しい気持ちになる読後感を味わえました。
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第40回織田作之助賞受賞作
修学旅行を利用して生き別れになった叔父に会いに行く主人公とそれに協力する級友の一日の冒険
今作も以前に読んだ「旅する練習」と同様、著者の繊細かつ丁寧な風景描写に武蔵野の街が眩しく映える
7人の男女高校生が過ごした掛け替えのない時間 -
青春を覗いてしまった。
挑発したり怒ったり、頑なだった班のメンバーが主人公の語った「一緒に溺れる人」の解釈に心を動かされたり、同じ綺麗な風景を見つめて同じものを食べて、相手のことを少しずつ知って、同級生からいつの間にか友人になっていく。
主人公の文章も男子高校生感がある気がした。高校生の自意識と、自意識を半ば自覚しつつも居直るしかない不器用さ。
基本的に育ちの良い子が通う学校なんだろうなとは確かに思った。 -
クラスメイトとの距離がふと縮まる時の嬉しいようなくすぐったいような瞬間が詰まっていて胸がいっぱいになった。
少し斜に構えた性格の主人公も主人公と行動をともにするうちに意外な一面をみせるクラスメイト達も全員を読んでるうちに好きになる。
こういう作品を読んで素直に良いと思える感性はいつまでも持っていたいなと思う。