卒業生には向かない真実 〈自由研究には向かない殺人〉シリーズ (創元推理文庫) [Kindle]
- 東京創元社 (2023年7月14日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (670ページ)
感想・レビュー・書評
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ピップこと聡明な女子高生探偵フィッツ・アモービが新たな謎に挑む物語の三作品目。原題は"As Good As Dead"
前作で衝撃的なトラウマのような死を目にし、司法・警察への不信を決定的にした、睡眠剤なしでは眠れないピップ。
本作では、まさかの無罪放免を勝ち取った"最低の人間"マックス・ヘイスティングスから名誉棄損の訴追を受ける。
頭のないハト、不思議な落書き、自らに忍び寄る不穏なサインに気付き始めた彼女は再びスプレッドシートに事実をまとめ、”敵である可能性のある人物リスト”に周囲の人間の名前を記し始める。
同時にとある連続殺人と冤罪の疑惑に気づき、再びリトル・キルトンとの関係性と、アンディ・ベルのもう一つの姿に近づいていく。
そしてピップの身に、最大の危機が迫ったとき、彼女は決定的な決断を下す。
最後にピップとラヴィが出した結論の正否はさておき、知識と行動力を持ち、制度と戦う若者の姿には少なからず心を打たれる。何より、著者自身の不条理への怒りが伝わる。
本作で描かれる主人公ピップは、前作までのまっすぐに真実を追う前向きな少女ではなく、PTSDとい思われる傷を負い、眠れず、危険に身を脅かされながらも戦う道を選ぶタフな姿。彼女自身に迫る危険に怯まず、奮い立つシーンは心が痛くなる。トラウマに戦い、司法と警察に抗い、自らの正義を貫く。予想外の展開に一作目の伏線回収、といえるような場面もあって読みごたえは十分。ミステリーとしてもすごく面白かったが、血反吐を吐き眠れずに事件と戦うピップのように、爽やかさの一切ない重苦しい読後感です。 -
ホリー・ジャクソン。ピップシリーズ三部作の最後。前作の最後に起きた事件でピップは薬物に頼るほど精神的に追い詰められていた。またマックスからの名誉毀損の訴訟もあり、そこにピップを付け狙うストーカーが現れる。警察はあいかわらず助けにならないでとうとう失望しきってしまう。前半はそのストーカーとの対決で、後半にはストーカーとの対決でピップが決断したことについて語られる。
第一巻を読み終えたときシリーズの最後がこんなに重いものになるとは思わなかった。
作者があとがきで触れているとおり刑事司法制度とその周辺の実態についての失望と怒りが本巻の根底に流れている。ピップの行動に賛否両論あるとは思うが、安易にハッピーエンドにせず、バッドでもない上手く混ぜ合わせた本作独自の結末に落としたのは良かった
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3部作となる作品の最後がこうなるとは予想もつかなかった。読みながらずっと頭の中で「これでいいのか?」と思いながらページをめくる手が止まらなかった。
なんとも言えない深い闇を残したままだけど、小説としては凄かった。 -
第一部の終盤、もうダメだー死ぬーとハラハラした後、
あっそうくるんだ、とむしろ見直しました。
この後半の展開がなかったら、ある意味、ただの名探偵モノになっていたというか、
この展開があったからこそ★5つをつけたい。
三部作構成も素敵ですね。
三部作の魅力(威力?)を遺憾なく発揮というか、
最初からこういう話だったんだなぁというか・・・
映画「スクリーム3」でも「なぜならそれは最終章だからだ 過去が襲ってくる
主人公の死もあり得る」とかなんとか言ってましたが(いや死んでないけど)、
なるほど三部作っていいものですね。