北川氏が元来敵対視していた野本氏に勝ったと異常に喜ぶところからこの物語は始まる。北川氏は感動にうち震えながらも回想を少しずつ入れて物事の顛末を整理していく。
回想の中で北川氏は野本氏と二人で飲みに行き、そこで女房である妙子がどのようにして死んでいったのかを青ざめた野本氏に攻めるかのように説明していく。子供でさえも死ぬことがなかったほどの火事だったのに、妙子が死ぬのはおかしいと思った北川氏は死因を調べていくと妙子が死ぬ前に一人の男が妙子の側にいて、何かを囁いてすぐに消えたという目撃証言が取れたという。ここで野本氏の顔色は一層ひどくなる。さらに昔、学生時代に妙子を、仲が良かった4人、友人一同が好いていたときのことを語る。その頃、妙子も野本氏もお互いが結婚すると思っていたのに北川氏と結婚したという話だった。そこまで野本氏と愛し合っていたのに、北川氏と結婚したのはなぜなのか、妙子を取られて野本氏は自分を、それこそ復讐したいほどに恨んでいるのではないかと匂わせていく。しかし、北川氏は妙子は自分を好きではなく、ほかの人が好きだったという。それも北川氏に隠れていつもつけている金メダルに好きな人の写真を入れておくほどに。北川氏はそこで野本氏に妙子の金のメダルの中に妙子を殺した、妙子が本当に愛していた真犯人の写真―つまり野本氏の写真―が入っていたと金メダルを渡す。野本氏は金メダルを受け取り、中身を見るまでもなく顔をうつぶせにして固まってしまった。そこで北川氏は復讐を遂げられたこと、真犯人を暴き、敵対視していた野本氏に後世に残るショックを与えたことに満足して、野本氏を置いて喜びながら帰った。
北川氏は一日たち、この復讐の全貌について語る。それはこの復讐をほかの妙子を殺した可能性のあるほかの友人にもしているということだ。自分を妙子が好いていたと思わせるようにそれぞれの友人の写真を入れた金メダルを計3つ用意して友人に仕掛けに行ったというのだ。こうすることで犯人は自分のことを好いていてくれる女を殺してしまったと自責の念に問われると思ったからだ。しかし野本氏以外の二人は金メダルを渡す前に犯人じゃないと分かったので渡せなかったと思うと、北川氏はそこであることに気づく。野本氏に渡した金メダルのことだ。嫌な予感が走り、焦っているところに野本氏から一通の手紙が届く。そこには「昨日は多忙であまり寝ていなくてひどい顔のままであったこと、途中でうつぶせになって寝てしまったことを許してほしい。昨日の話では金メダルに入っている写真の男が犯人ということだが、松本君がやったとは信じがたい。」と書かれていた。