日系2世に関する作品を読んでみたいと思っていたところに、本書に出会った。第二次世界大戦中のハワイが舞台、主人公は日系2世の14歳の少年、マレスケ。
児童文学らしく爽やかで瑞々しい語り口で、日系2世としての立場の危うさや板挟みになる苦しさが描かれる一方、淡い恋や進路に悩む姿など十代らしい描写も多く、とても読みやすい。
じわじわと戦況が悪化し、厳しい立場に立たされるハワイの日系人たち。祖国か、今自分が住む国か。日本からハワイに移り住んだ祖父とは違い、ハワイに生まれ育ちアメリカ国籍を有するマレスケ及び彼の兄姉とは、立場も微妙に異なる。読んでいて、心を引き裂かれる思いだった。
なかなかシビアで深く考えさせられる場面も多々あるけど、重苦しさを感じさせない展開が見事。戦争の酷さを描きつつも、しっかりとマレスケの成長物語として成立させている。若者たちには是非とも読んで欲しいな。アイデンティティの問題は決して過去のものではなく、現在も世界のあちこちで、似たような思いに苛まれている人々がいるかもしれない。
このタイミングでこんな良作に出会えて本当によかった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
絵本・児童文学・YA
- 感想投稿日 : 2019年9月20日
- 読了日 : 2019年9月20日
- 本棚登録日 : 2019年9月14日
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