築60年の団地に暮らす、アラフィフ幼なじみコンビの奈津子とノエチの日常。奈津子はイラストレーターの仕事の傍ら、ノエチの兄の80年代お宝ものや団地の住人の持ち込みをフリマアプリで売って暮らしている。コロナ禍の最中だけどのんびりとした彼女らの日々は、わかりやすい盛り上がりがない分退屈に感じられるかもしれないけど、漂うユルい空気感が心地よい。フリマアプリの売り上げがあったとき、ちょっと贅沢に美味しいものを買う。そのささやかさがリアルで、奈津子とノエチが自分と同世代ということもあり、あるあるだな~といちいち響く。藤野さんの小ネタが毎度作品を読むたび楽しいのだけど、今回ももれなく!で、「なめ猫」など80年代ネタや、「街の上で」など自分好みの単館映画ネタがあると身悶えするほど嬉しい。
団地のおばちゃん達との交流エピソードもほのぼのするけど、築年数的にいつか取り壊すかもしれない団地のこれからを思うと、ちょっと寂しくなる。幼いときに別れた2人の幼なじみとのエピソードなど‥ゆるゆるした日常に、数滴落とされたような、ほんの少しの切なさ。その描写のさりげなさが藤野さんの上手さだなと毎回唸る。
北澤平祐さんの装画も雰囲気にぴったりで可愛らしくて、大好きです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の作家
- 感想投稿日 : 2022年8月1日
- 読了日 : 2022年8月1日
- 本棚登録日 : 2022年4月1日
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