疑心―隠蔽捜査3― (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2012年1月28日発売)
3.75
  • (174)
  • (366)
  • (291)
  • (43)
  • (6)
本棚登録 : 2731
感想 : 288
4

2012年(発出2009年) 426ページ

『恋愛など、発情した猫の感情とそれほど違わない。人間を人間たらしめているのは、間違いなく理性なのだ』
冒頭で、アイドルの山咲真美が一日署長を勤めることになり、署内の雰囲気が浮かれ気味になった際に竜崎伸也が思っていた言葉です。
今回は、そんな竜崎が、美人の女性キャリアに恋して苦しんでしまうお話です。

アメリカ大統領の訪日の警備計画に関し、竜崎は羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に任命される。竜崎の補佐役として女性キャリアの畠山美奈子が送られてきた。その畠山美奈子に、竜崎は嵐のように激しい恋愛感情を抱いてしまう。四六時中彼女のことが頭から離れず、他の男性といるところを見ると嫉妬し、そばを離れると喪失感を覚え、苦しみのあまり夜も眠れなくなってしまう。そして、米大統領警護のため派遣されたシークレットサービスとの摩擦。大統領に対するテロ計画があり、それに日本人が関与しているという。大統領専用機は羽田空港に乗り入れる予定だが、その羽田空港の防犯カメラに不審な動きを発見し、シークレットサービスのハックマンは即座に羽田空港を封鎖すべきと主張する。国からは空港は封鎖はしないとの決定が。板挟みになった竜崎の判断は? そして苦しい恋心の結末は?

なんだか、竜崎のいつもの切れ味が影を潜めてしまいます。仕事中もずっと悶々としており、畠山美奈子への感情が仕事に影響してしまっていて、正直イラッとしました。終盤になり、ようやく竜崎は自分の悩みを解決できましたが、このあたりは禅問答の話で煙に巻かれたような。

このシリーズが、警察官僚・竜崎伸也の人間的成長を描く物語だとしたら、必要回なのかもしれません。また、娘の美紀の恋愛問題に対する竜崎の姿勢の変化を描くのにも必要な悩みだったのかも。

今回、竜崎語録で1番共感した言葉です。

『出世するというのは、それだけ権限が増えることを意味している。権限が増えれば、できることも多くなる』

私は、同様のことを上の立場に立ちたくない同僚に言ったことがあるからです。しかし、責任も増える立場には立ちたくないみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 国内 男性作家
感想投稿日 : 2024年2月26日
読了日 : 2024年2月21日
本棚登録日 : 2024年2月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする