仕事の関連で、畠山さんの講演を拝見ことがあります。とても情熱的で、飽きさせないその語り口調が印象に残っており、そのときに初めて森と海、鉄のもつ素晴らしさについて知りました。じつは深くつながっている森と海の関係は、畠山さんを始めたくさんの研究者や協力者のみなさんが各所で尽力したからこそ、解き明かされてきたものだということが本書でよくわかり、関係がない私でも感慨深いものを感じました。
また、じつは理にかなっている昔からの風習を、科学的に解き明かすことの大切さも感じました。なぜその慣習は残ってきたのか。それが科学的に納得されることは、古い風習をこれから先へ残していくための、有力な解決策ですね。内山節先生の共同体の思想とも関連しますが、めんどうくさいこと、効率の悪いことは、現代の社会では悪とさえ見なされ、効率化、短期的収益性にばかり目が向いてしまっていると思います。ですが、古くからの慣習が思想や個々人の尽力によってのみ支えられるものではくなれば、もっともっと各地に残る風習は見直されて行くのではないでしょうか。
鉄がつながりを作りだし、オーストラリアまで行ってしまう、というのは本当に驚きました。京都大学の先生にまでなってしまうなんて、人と人との出合い、人生の流れ、本当に何があるかわからないのだなと思うと同時に、それを実現してきたのは畠山さんの情熱やお人柄なんだなとも感じています。
東日本大震災を経てなお、もう一度立ち上がる畠山さんの姿(というか文章)に、心が震えました。人間が壊してきてしまったもの、それこそ森や海や山などの自然、もしかしたら人間の考え方や存在そのものすら壊れてきているかもしれません。それを修復しながらいかに次代につなげていけるのかを考える上でも、畠山さんの行っていらっしゃる活動は、とても勇気をいただきますし、自分も前に進んでいかねばという気持ちにさせていただきました。ぜひ、畠山さんが漁師をやっていらっしゃる毛根湾にお伺いしてみたいです。
- 感想投稿日 : 2015年2月8日
- 読了日 : 2015年2月7日
- 本棚登録日 : 2015年2月7日
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