前作「花夜叉」の中に収められる予定だった本作「花鬼」
能楽界最大流派観月流三十代目宗家を継ぐ事になった美貌の能楽師・観月鏡花(篠芙)
観月流のために身体を捧げ続けさせられる鏡花の姿が本当に痛ましいのだけど、山藍紫姫子先生の描く倒錯した性の世界は陶酔するように官能的で重苦しい物語なのにまたその世界へと何度も誘われてしまう
歌舞伎役者に幼少期お稚児のように弄ばれ凌辱された場面は可哀想で可哀想で、本気でこの男を殺したいと思ってしまったほど
どんなに弄ばれても篠芙は誇り高くその根幹にある尊さ清らかさは誰にも侵されてはいない
だが己の身も心も犠牲にしてまで伝統を受け継いでいかねばならない精神は私には到底受け入れ難い
それは背負うものの重さが違うという事だと思うけど、ある意味身売りされた奴隷のようなものだ
篠芙に群がる人間は篠芙の美しさ艶めかしさに魅了され篠芙を犯し奪い無理矢理降伏させる
篠芙が自ら欲しいと望んで受け入れたのは異母弟の明煌だけだ
最後に篠芙と明煌が結ばれる場面は奪い合いではなく2人が心から愛し合い求め合っているようで切なくも美しい
明煌と篠芙がいつか怨念のような重い鎖を断ち切り自由に愛し合える日が来て欲しい
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
BL
- 感想投稿日 : 2021年1月30日
- 読了日 : 2020年12月25日
- 本棚登録日 : 2021年1月9日
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