なんとも人前で読みにくい表紙です。
このあいだ読んだ『歳三 往きてまた』が、敗走に次ぐ敗走の中でも武士であろうと足掻く、勝負を諦めないために負け続けてもなお生きることを諦めなかった土方歳三の話でしたが、これは試衛館で武士を夢見ていた頃から池田屋に突入するまでの話。
『歳三 往きてまた』は胸が痛くて読むのがしんどかったけれど、これは逆に愉快であるからこそ哀しくて辛かった。
この先もう、新選組の本は読めないのではないだろうか。
何を読んでも辛くてしんどい。
どちらの作品も、殺伐とした新選組の中で沖田の明るさが土方の心を救っていて、沖田の人気の一端がわかったような気がした。
しかし、陰謀と血にまみれた状況であそこまで明るくいられるのは、それはそれでちと怖いけど。
江戸を立つ直前のできごとにより土方の命を執拗に狙っていた男と、池田屋に向かう前に最後に対峙する。
もちろん土方がやられることはないのだが。
”首の骨が折れたのだろう。男が軟らかくなった。
「じゃあな」
歳三はバラガキに別れを告げた。刀を腰に差し込み、池田屋へと走った。
ふり返ることはなかった。”
もし、彼らが生きて明治を迎えることができたら、この時代を懐かしく思ったことだろう。
”彼らがのちに――もしかしたら死んでから懐かしく思い出すはずの”あの頃”だけを、物語にした。それが中場さんの優しさなのだと思う。”
重松清の解説にまで泣ける。
年のせいか、ハッピーエンドじゃないとしんどくなってきたなあ。
- 感想投稿日 : 2022年4月8日
- 読了日 : 2022年4月8日
- 本棚登録日 : 2022年4月8日
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