最初にジントの生い立ちから始まったので、てっきりジントの物語なのかと思ったら、どうも今作を読む限りではラフィールが主役の話のような気がしてきました。
突然帝国に侵略され、徹底抗戦を叫ぶ地元の人たちを裏切って帝国の貴族の身分を手に入れたジントの父。
そんな父親のせいで、成りあがり貴族としての居場所のなさを抱えるジント。
ジントと父の対立、または裏切ったと見せかけて地道に抵抗の火を育て続けた父の真実、などの話かと思っていたのです。
ところが、ジントが士官学校へ向かうために乗ったっ戦艦が、反帝国勢力に攻撃され、ジントを逃がすために発射された小型機は、息をひそめて気配を隠していた弱小男爵領で捕獲されてしまいます。
自身の領地を守るため、ジントとラフィールを監禁した男爵のもとから脱出した二人の行動の結果は後味のいいものではありませんでした。
表紙の絵だったり、ジントとラフィールの会話だったりからユーモアSFのつもりで読んでいたので、突然の、生き残りをかけた闘いの厳しさに、目が覚めた想いでした。
貴族には貴族の生き方があり矜持がある。
それを守るためならどんな手段を取っても…というのは、ジントよりもラフィールこそが皇帝の孫として日々突きつけられたものなのです。
男爵領から脱出しても、逃げついた先は反乱軍に制圧された場所。
生活様式も言葉も通貨も違う異国で、今度はジントがラフィールを守ります。
ね、最後の一巻は『王女の帰還』になりそうじゃないですか。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月18日
- 読了日 : 2023年10月18日
- 本棚登録日 : 2023年10月18日
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