漱石に接した人間は多く回想の文章を書いているが、本書は一番弟子とも言うべき小宮豊隆の師漱石をはじめ、寅彦、三重吉、松根東洋城、安倍能成、森田草平等についての回想の文章を収めたもの。
本書を始め弟子たちの文章からは、いろいろ忙しいにもかかわらず面倒見の良い漱石と、それに甘える弟子たちとの子弟関係が良く分かるが、それにしてもこれだけ弟子たちから慕われた漱石の偉大さと言うものを改めて感じた。
もっとも印象に残ったのは、巻頭の「休息している漱石」の中の文章で、「今から考えると、私たちはどうしてあんなに先生の邪魔計りしていたのかと慚愧に堪えない。」との弁。おっしゃる通りとは思いつつ、それだけの時間を割いてなお漱石があれだけの作品を書いたことに驚くのだが。
(もっとも、「我々がああして先生の邪魔をしたからこそ、淋しがりやの先生も、いくらかは気が紛れてよかったのだ」と言うのだが。)
他の人物評からも各人の性格や著作の本質等が自ずと浮き上がってきて、その目の確かさに頷かされるところが多い。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年11月27日
- 読了日 : 2023年11月23日
- 本棚登録日 : 2023年11月24日
みんなの感想をみる