戦国期足利将軍研究の最前線

制作 : 山田康弘 
  • 山川出版社 (2020年6月1日発売)
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近年、応仁の乱や観応の擾乱に関する新書がベストセラーになるなど、室町時代に関する関心が高まっている。ただ、多くの人にとってはー自分もそうだったがー義政の次は、義昭に飛んでしまい、信長によって幕府は滅んだという程度の知見しかないのではなかろうか。

9代義尚から15代義昭までの将軍及びその時代の実相について、最前線の研究成果を平易に解説した本書は、そうした空白を埋めるに、もってこいの一冊である。

応仁の乱後、足利将軍は実権を失い、細川氏や三好氏、あるいは信長の傀儡だったとの見方がややもすると強かったが、本当にそうだったのかを、近年急速に進んだ史料研究に基づき、各編で説明されている。

裁判における将軍の役割、直属の軍事力・警察力の規模、将軍からの栄典の意義、紛争に介入し和平調停をする場合の実効性といった、興味深いテーマについて、分かりやすく教えてくれる。

紙数の関係で、深掘りには物足りないところもあるが、そこは紹介された文献に拠ってほしいということであろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年6月3日
読了日 : 2020年6月3日
本棚登録日 : 2020年6月3日

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