「歴史学の歴史」についての、ごくごく簡単な概説。本文168ページという読了コストの低さに鑑みれば内容は十分なはず、ただ大満足!とはいかないのが歯がゆいところ。
ランケに始まる実証主義歴史学から、アナール学派などの社会史、言語論的転回、20世紀末以降の実践重視の試みまでが大急ぎで解説される。紙幅が限られる中、歴史学における実証主義の特徴として「記憶の排除」、ナショナル・ヒストリー、欠如モデルの3点を挙げ、これらを乗り越えようとする試みとして以後の歴史学を描く。全体としてのまとまりもあり、読み物として非常によく出来ていると思う。
しかし、中学・高校生を読者層として想定しているからか、まだ発展途上の同時代的な潮流(グローバル・ヒストリーなど)に割くページ数が多い。そのためか最後の方はやや失速気味。個人的にはマルクス主義・進歩史観の興亡などを期待していたためそこは残念。
現代の歴史学の試みについては、試みとしては面白そうではあるが、現代美術のような「何でもあり」化が進んでいるようにも感じられた。社会学や民俗学にも同様の問題意識はあるらしく、ポストモダン世界での人文科学は「歴史の終わり」を迎えつつあるのかもしれない、などと思った。
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- 感想投稿日 : 2023年2月27日
- 読了日 : 2023年2月23日
- 本棚登録日 : 2023年2月23日
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