亜獣譚(1) (裏少年サンデーコミックス)

著者 :
  • 小学館 (2017年5月12日発売)
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本棚登録 : 86
感想 : 5
5

いやー!最高。

ここ数年で目にできた最高傑作だと思う。スゴ本確定。

他の方の感想を読んだけどみなさん、感想を書くくらいだから感動されているのは当然として、かつ知名度が出ないことを疑問視されてた。わたしもマルっと以下同文!

一言で言うと、愛と執着の物語かなあ、って思った。そしてなんと言っても伏線回収が見事!
子供のお絵かき、ヴィエドゴニャの設定、最初の2人の夜のシーンが最後までずっと、2人の気持ちの読み解きとして繰り返されるあたりも、もう、天才!

最終話もほんとに、構図からなにから素敵すぎてため息が出た。うう、いいもの見たよ…
ベルセルクとか寄生獣レベルで流行っていいと思うんだけどなあ。そのあたり好きな方にもオススメです。


(ここからは長いし本筋から離れるので読み飛ばし推奨)

なかなか殺伐としたダークヒーロー系のチェンソーマンとかメチャ流行ってるのにあまり評価されてないのはなんでかなあ…

と、自分なりに考えた結果やはり、これは少年マンガではないから、というか主人公が少年ではないからではないかと推察。

一つは読者層の幅。
雑になるけど人って、自身の経験に照らした方が反応しやすいんじゃないかと思ってる。つまり、少年を主人公にした場合、現・少年と元・少年、つまり経済活動できるほぼ全ての年代が物語を自分ごと化できるけど、青年マンガになると、現・少年エリアをバッサリ切ってしまうからなんじゃないかなあ、って。

あとは判官贔屓というか圧倒的強者である人が世の中にはほとんどいないから。
少年マンガだと、主人公は「大人」に対して物理的に、どうあっても一定程度劣勢にあることは避けられない。人生もそうで、もう完全勝ち組で安泰、って人は少なく、程度の差こそあれどうしてもどこかで強者と闘っている層が大多数なんじゃないかなあ。

それと、展開の振れ幅。
出来上がってないゆえに揺れたり崩れかけたりする幅が大きいのは少年の物語だろうし、先読みしきれずにドラマチックな展開にできるんじゃないかなあ。大人が主人公だとせいぜいジョブチェンジくらいだし。その意味では異世界転生は大人を主人公にしつつも展開を根っこからひっくり返せるものすごい発明だと思う。

…長くなったけどそうなるとやはり、出来上がっている青年主人公よりも可能性はあるもののスタートから本来劣勢である少年の伸びしろが物語の中心に来る少年マンガの方が潜在的読者層の数的に圧倒的に有利なんじゃないのかな、と思ったり。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 不世出の名作。この時代に日本人に生まれてこの本に巡りあえてよかった!
感想投稿日 : 2023年8月19日
読了日 : 2023年8月19日
本棚登録日 : 2023年8月19日

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