昭和16年に小学校3年だった大阪生まれの主人公が、戦前・戦中・戦後、どのように生活したか また、当時日本はどのような状況だったかを具体的に実話を元に描いた物語だった。
今まで色々な、太平洋戦争を元にした物語を読んできたが、1番悲惨な環境だなと思った。
赤ちゃんの時に亡くなった子供を含めて10人。そのうちの5人と両親の家族だった主人公。
京都在住のサバサバ系長女。婚約者が戦死。母と主人公、三男の生活の手助けやお金の工面をしてくれた。のちに結婚し、主人公の娘を養女とした。
結婚後、吹田市に移住した長男。嫁のせいで人間性が変わる。母と主人公、三男、愛犬が居候してきた時は、嫁のいいなりだった。
だれにでも優しく、山仕事と動物園の手伝いをしていたが出征した次男。出征して4ヶ月で戦死。
車掌の次女。のちに結婚して独立。
あだな「ちいやん」の主人公。戦時中、母と三男、愛犬の面倒や看病などをしていた。のちに結婚し、3人生まれる。
甘えん坊で主人公の2つ下の三男。母と主人公、愛犬といつも一緒だった。
三男が小一の時に拾って飼い始めた愛犬。主人公の長女が生まれる前の年に亡くなった。
防空壕に避難したが、焼夷弾が落ちて命からがら避難したり、見渡す限り火の海で知り合いや一緒に避難した名前も知らない人が目の前で飛び散った炎や焼夷弾で殺されても自分の命を守るために無我夢中で逃げ回ったり、安全な場所を求めて何回も引越ししたり…。本当に、戦争中は「大変」という言葉で済まされないくらい大変な生活だったんだなと改めて知った。
本文から、知らなかったことなど
1 子供が履く運動靴は靴屋の店頭から消え、学校からの抽選配給となった。抽選配給のため、抽選に当たる人、当たらない人との差が激しく、当たらない人は永遠と小さい靴を履いていた。
2 憲兵と別に、思想犯や社会運動をする人を取り締まる特別高等警察がいた。
3 戦死者を出した家庭は名誉ある家のため、玄関に「誉の家」と書かれた紙を貼るよう町から配られた。
4 昭和18年に死者1万人の、鳥取地震や本州西部に台風が来て大被害が出たが、メディアは控えめに報道していた。
5 集団疎開先で使う布団などは寝る本人が持参する。また、集団疎開しても食材は自分達で調達する。
6 空襲の火災が広がらないように、密集している家々を壊すことで家を壊した空き地を防火帯にする、建物疎開というものがあった。それに当てはまる住民は強制的に引越しさせられた。
7 焼夷弾からはじけて飛んだ、ゼリーのような火油は張り付いたら最後、皮膚だろうが、服だろうがくっついたまま、燃え続ける。水をかけても、燃え広がって火が消えない。
8 GHQが来ても配給制度は変わらず、物資・食料の不足は戦時中より悪くなった。
9 違法な闇市で買った品物が見つかれば全て警察に没収された。
10 戦後も停電だったが、市電はいつも動いていた。けれど、それに乗ると取り締まりの警官が巡回してくることが多かった。
- 感想投稿日 : 2023年10月9日
- 読了日 : 2023年10月9日
- 本棚登録日 : 2023年10月9日
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