殺し屋に命を狙われるより(狙われたことはない)、他者との会話の方がスリリングだと思う。
話がどう転がっていくのかわからない。
相手が腹底で何を考えているのか分からない。
そこに「相手の素性も、近づいてきた本当の目的も分からない」も加わったら、もう、私にとっては手に汗握るサスペンス。
この小説は、歴史を研究する男子高校生と、城址で出会った怪しい中年男がメインの会話劇。
腹の底からフツフツと笑いが込み上げてくるようなラストの後のページの、数多くの参考文献に、思わず頭が足れそうになる。
「書いたもんはすぐに読んでもらわなもったいないと思うんが大勢の世の中や。ひょろひょろ育った似たり寄ったりの軟弱な花が、自分を切り花にして見せ回って、誰にも貰われんと嘆きながら、いとも簡単に枯れて種も残さんのや。アホやのー。そんな態度で書かれとる時点であかんこともわからず、そんな態度を隠そうっちゅう頭もないわけや。略」p112
はい、すみません。それは私です。
とはいえ、楽しみました。
2021年下半期芥川賞候補作。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2022年3月14日
- 読了日 : 2022年3月14日
- 本棚登録日 : 2022年3月14日
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