はじめて(本で)出会った歌人は穂村弘さん(『世界音痴』というタイトルのエッセイ)だけど、はじめて買った短歌集は枡野浩一さんの歌集だった。
どうして知ったのかは覚えてないが、16年ほど前にハマっていたヤフオクで買った。
届いた商品には手紙がついており、丁寧な人だな〜と思いながら、本を開いて驚愕した。
なんと、乾いたハナ◯ソがびっしりとあちこちのページについているのだ。
わたしは混乱した。なぜ?なぜ、こんな状態に?
やりとりのときも、手紙の文面もフレンドリーで何の問題も感じなかったので、そのことに逆に恐怖を感じ、泣き寝入りしてしまった。
ハナ◯ソは意を決して全部取った。
本の内容は素晴らしく、こんなわたしでも短歌が作れそうな気がして、一首作ったが、それで終わった。
それでも、枡野さんの歌には心が震えた。
この短歌集の前半で、その短歌を読んでいた時間と空気を思い出して懐かしかった。
しばらく心の友として、手帳に書きつけて持ち歩いていた歌もあった。
その歌を思い出すとほんの少しだけ強くなれそうな気持ちになった。
全然強くなれなかったけど、気がするだけで生きのびられた。
他人の作った歌だけど、自分の歌みたいに感じた。
この歌集の栞の俵万智さんの枡野さんへの返信に書かれている通り、「(枡野浩一さんの短歌の)もうすでに読者のものという顔つき」に、多くの人が助けられたと思う。
「みんなが使う言葉」で、短歌を知らない、興味ないひとたちにも、伝わるように、届くように、短歌の世界の裾野を拡げてくれたのは、うれしい。
4月から、NHK短歌の選者を勤められるということで、今からドキドキです。
どんな歌を選ばれるのだろう。
- 感想投稿日 : 2024年2月13日
- 本棚登録日 : 2024年2月13日
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