少女たちの19世紀――人魚姫からアリスまで

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  • 岩波書店 (2013年12月20日発売)
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日本ではあまり知られていないイギリス人児童文学作家ジョージ・マクドナルドがいるのですが、彼と『不思議の国のアリス』のルイス・キャロルの作品なかで見えてくる、一見奇妙に見える物語の出来事や展開、奇妙奇天烈な登場人物たち。

これらが教えてくれるのは私達は物語を通して、生まれてきて未知の物事と出会ってきた感覚、まっさらな目を持つ感覚を追体験することで、物語を読むことで魂の変容が起こり、物語を持つということが生の種火を心に灯してくれるということではないかと感じました。

それは安田菜津紀さんのツイッターで紹介されていた佐藤慧さんのエッセイを読んでいて感じたこと、グリーフケアという世界にまで通づる視点なのではと感じたことでした。→

『悲しみと共に生きる』 第1回:物語を組み立てなおす | Dialogue for People

まだまだ『少女たちの19世紀』(岩波書店)の魅力を書き切れていない気がして、私が書いた感想だけではなく、本の示唆に富んだ指摘や19世紀の物語やバレエ、演劇などのそれぞれの影響が書かれていて、紹介されている作品も多く、興味のある方にはとても良い導き手だと思います。また、佐藤慧さんも

取り上げさせていただいて、私の軽薄な感想でお気持ちを悪くさせてしまうのではと思ったのですが、物語の主人公たちを待ち受ける苦難や不条理、暗闇の世界を自分の足元は見えないが一緒に苦難を乗り越える相手の足元は見えるから教えあってくぐり抜けるといった比喩的な死を通して光の世界に

自ら足を踏み入れていく過程に、佐藤慧さんのエッセイに込められた深い深い悲しみと苦しみと人間の力に同じような畏怖と慈しみを感じたのでした。




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感想投稿日 : 2021年2月26日
本棚登録日 : 2021年2月25日

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