三匹のおっさん ふたたび

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年3月28日発売)
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本棚登録 : 6995
感想 : 916
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三匹のおっさんの続編を見つけたので思わず手に取った。
前作同様 章ごとに楽しく読めて、息抜きするのにちょうどいい長さだ。

今作ではサブキャラクターに視点が当てられていて、それを掘り下げる話が多かった。

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個人的には貴子さんの成長物語が好き。

前作は詐欺に引っ掛かって70万円の空気清浄機を買わされたり、道場を潰してピアノ教室にしようとしていたり、世間知らずのお嬢様育ちということが皮肉混じりに描かれていた。

今作では肉屋のアルバイトを経験し、人間関係に揉まれてお金を稼ぐ難しさを知ることになる。
お金のトラブルに見舞われた時も、三匹の力を借りずに自分で解決した貴子の成長が感じらる。

前回下がりに下がった好感度を、がっつりと盛り返してくるこの感じ。
有川せんせいは、キャラクターの魅力の出し方が上手だなぁと思った。


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貴子の話だけでなく、書店の万引きの話や、地域のお祭りの話など私たちにも馴染みのある話の裏話が知れて面白い。

例えば、本屋で万引きが起こると店の不利益についての話では、

「税込400円の漫画本を一冊売って、店の利益は80円。
万引きされたこの一冊の損失を埋めるために、同じ本を5冊売らなくてはならない。」

と説明がある。
万引きによって潰れる書店があるのも事実で、万引きされた本が古本屋に売られるという流れも説明してある。

本屋の利益や損失の話を知れたのは興味深かったが、社会問題なのにもかかわらず、万引きをする人の罪の意識の低さは問題だなと考えさせられた。


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真剣な話もあるが、決して笑いを忘れない。

所々にクスッと笑えるポイントを忍ばせておいて、気を抜くことができるのが三匹のおっさんの良いところだ思う。
このての話が
大好物なので、続編が出たらぜひとも読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年8月16日
読了日 : 2020年8月12日
本棚登録日 : 2020年8月12日

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