まちがえる脳 (岩波新書 新赤版 1972)

著者 :
  • 岩波書店 (2023年4月20日発売)
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やや専門的すぎ、一般人には理解しにくい箇所があったが、脳がいかにまだ分からないところが多いか、また次のように巷で言われていることが真実でないか、と言うことが知り得た。

具体的で本質的な疑問
・自ら発火できないニューロンがつながりつくられている脳が、どうして自発的に活動できるのか?
・ニューロンは集団が同期発火することで信号を伝えているが、同期させているものは何か?
・脳内の情報はどのような活動や状態で存在しているのか?
・脳の信号伝達に基づく情報処理とは、具体的にどのような活動で行われているか?
など。

認識を新たにしたこと
・'16年の米国の死因第3位は年間25万人の医療ミス(人間は間違える。システムに原因と対策を求めることが必要)
・カフェインは夜間の覚醒度が上がり、作業しているときの注意力と集中力が向上し、作業ミスが減少し、記憶課題の成績が上がり、スポーツなどの有酸素運動の能力も向上する。これらの作用に必要なカフェインの量は50〜150mg(コーヒー1杯か2杯分)程度であり、それ以上増やしてもさらなる効果は期待できない。
また、脳が使えるエネルギー源はブドウ糖であるため、糖類とカフェインの同時摂取が一番効率が良い。
口から摂取され血中に入ったカフェインは脳内に運ばれ、ニューロン間の信号伝達を抑制する物質の作用を遮断し、促進する物質の量を増やすことで、脳の広い範囲を興奮させる。しかしこの興奮作用は、覚醒剤や麻薬ほど強力ではないが、耐性や依存性を生じさせることもある。また大量のカフェイン摂取は、不安、過敏、イライラなどの精神的な緊張を高めることもわかっており、摂取を止めた後の離脱症状として、眠気、意欲減退、注意・集中力の低下、頭痛などが現れることもある。
さらに、一気に大量を摂取すると、急激な血圧上昇や不整脈などが生じ、最悪の場合、死亡することもあるという。欧州食品安全機関(EFSA)によると、無難なカフェイン摂取量は1日当たり400mg未満(コーヒー5杯分ほど)、1回当たり200ミリグラム未満。(個人差あり)
・人間の脳はコンピューターに比べると、その処理能力の観点ではかなり劣る。しかも間違える。ただ間違えることで創造か生まれる。また、一つ一つの能力はコンピューターに劣るとしても、総合力に長ける。
・宇宙に長期滞在した飛行士の脳は、数ヶ月間寝たきりになった時と同じ程度の、脳に萎縮が見られる。ただリハビリにより回復する。
・脳の活動が心を生んでいる。
・偽薬の効果は、パーキンソン病の薬や外科的手術、更に高山病にかかった時の酸素に見せたただの空気でも確認出来ている例がある。
・AIに誤認もあるが、膨大なデータを膨大な計算で処理されている結果の産物であるため、人が追えるものではない。
・特に成長期の子どもは眼球運動がまだ不安定な時期でもあるため、現実の物理法則に反する動きをVRで何度も体験すると、眼球を制御する神経回路に支障をきたす可能性がある。さらに、VRを長時間にわたり経験すると、衝動性を抑える抑制機能が低下し、!Rで見た光景や経験を現実であったかのように混同することも起こるという。
・左脳は言語や論理に関わり、右脳は感性や視空間認識に関わると言われ、各脳を鍛えるビジネスまであるが、そんな単純なものではない。
・前頭葉―高次機能、頭頂葉―空間認知、扁桃体―情動制御というように、特定の脳部位と特定の機能を一対一で対応させることは、単純すぎて信頼性に欠ける。
またどの脳部位に性差があるかについては、研究によって異なっている。
・脳は10%(ものによっては5%とか20%)しか使われていないと言うのも迷信。
・聴覚野や視覚野などの感覚野は、互換性を持つ等、どの部位も様々な機能を持つ多能性を備えている。
・脳のどの部分が活発に働いているか、脳を取り出して明るくハイライトさせるイメージ写真や図があるが、これは加工したもので、実際血流が増えたことが明確に分かるような差違はない。

なるほど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年8月3日
読了日 : 2023年8月3日
本棚登録日 : 2023年7月31日

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