アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

  • 日経BP (2019年3月23日発売)
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デジタル化が進む中国の事例を参照しつつ、「デジタル化」後について説明している。
デジタル化が進む程、OnlineとOff-lineの境界が無くなり、顧客のジャーニーに基づく価値提供が焦点となる(Onlie Mergees with Offline、OMO)。
更に、データを使った継続的な改善により、デジタル化されたインフラが強化される。
たいへん分かり易い説明である。

しかし、デジタル・インフラは寡占化しやすく(例:GAFAによるデータの支配)、中国での「テンセント陣営」、「アリババ陣営」の2つが競い合っている状況は、今後も続くか不透明。片方が倒れれば独裁政権による国民の監視システムに容易に取り込まれるリスクがある。

また、社会のデジタル化を支えるキャッシュレスについて、現金の持つ匿名性がキャッシュレスにより阻害されることも気になる。不正資金の流通という問題はあるが、他人に「いつ」「どこで」「何を」買ったか、把握される事に気持ち悪さを感じる日本人やドイツ人は多い(ドイツはEUでキャッシュレス化が遅れ、日本と同じく現金決済が主流の国)。歴史の教訓として、権力側に資本の情報を管理される事のリスクを捉え、キャッシュレス化にブレーキがかかっているのは理解できる。逆に、国家権力の暴走リスクの高い中国や、自由を重んじる(はずの)アメリカでキャッシュレスが進んでいる方が私には理解しづらい。

さらに、日本の場合は超高齢社会の中でデジタル・デバイドの影響を受けないキャッシュレス・システムが必要。スマートフォンを使いこなせない高齢者を取りこぼさないキャッシュレスの仕組みを(高齢者人口の割合が高い)地方を中心に普及できないと、日本のデジタル化やその先のOMOの普及は進まないと予想する。

しかし、デジタル化・OMOが進んだ企業と遅れた企業の収益性の差が広がり、遅れた企業が淘汰される(ディストピアな、もしくはバラ色の)社会は、それなりの信憑性がある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 専門書
感想投稿日 : 2023年1月8日
読了日 : 2023年1月8日
本棚登録日 : 2023年1月8日

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