グラスゴーで行われたCOP26での議論は、インドの最後のちゃぶ台ひっくり返し的な主張(石炭火力発電を「廃止」ではなく「削減」としたこと)がクライマックスだった。日本の存在感や主張はほとんど聞こえてこず、単なる政治ショー的なものとなった印象だ。自動車産業が経済の根幹の一部をなしている日本にとって、内燃機関の自動車が電気自動車に置き換わっていくことはマイナスだという主張も散見される。
そのような中で、11月17日には、ビルゲイツが出資するテラパワーというベンチャー企業が、ナトリウム冷却高速炉という新世代の原子炉を、ワイオミング州のケマラーという街に建設するという発表をしていた。
小型のナトリウム冷却高速炉は、原子炉の制御上の危険性を原理的に解決しているとして、以前からゲイツが推進していたのは知っていた。この本においても、ゲイツによるナトリウム炉推進のボジショントークをするのだろうと想像して読みだしたのだが、タイトルどおり、もっと壮大かつ網羅的な話だった。
そもそもなぜ2050年の二酸化炭素排出ネットゼロを目指さなくてはいけないか、ということへの説明から始まる。
CO2は年間510億トン排出されている。これを減らすのではなく、なくすために何ができるか、ということを詳述している。
具体的には「電気を使う(年間510億トンの27%)」、「ものをつくる(同31%)」「ものを育てる(同19%)」「移動する(16%)」「冷やしたり暖めたりする(7%)」という形で原因を分解。それぞれの人間の行動における技術開発の事例を紹介している。
上述のナトリウム高速反射炉は「電気を使う」だけでなく、それ以外の経済開発も電力を使うことになる以上、もっとも重要な技術のひとつとなる。
さらに、暖かくなった地球に国家はどのように対応すべきかという議論や、国家・地方自治体の政府がとりうるアクションについても議論。
悲観的なトーンはなく、ハンスロリングの「ファクトフルネス」を引用し、「何をすべきかを知っていれば楽観的でいられる」としていて少しだけだけど気が楽になった。
- 感想投稿日 : 2021年11月29日
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- 本棚登録日 : 2021年11月8日
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