チェーザレ 破壊の創造者(10) (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社 (2013年3月22日発売)
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感想 : 49
5

借りたもの。
大人になろうとしていた少年たちが青年になった巻。
冒頭のドタバタでは、勢い余って倒してしまった彫刻の男の沽券に関わる部分が見事に折れてしまい……
当たり障りのないようにアンジェロが機転を利かせて、ミケランジェロを召喚したり。修復作業の描写は丁寧で、見学しているチェーザレと同じ目線に立てて読んでいて面白い。

ジョヴァンニの学位取得の試問は、教養を前提とした出来レースのように見える…が。そこに反感を覚えたピサの職人頭( 4巻 https://booklog.jp/item/1/4063723968 に出てきた露店で絡んできた親父さん )の言葉を受けて、チェーザレはジョヴァンニに鋭い試問を投げかける。当時、絶対視されるキリスト教価値観では徴税人や高利貸しは悪人。その金融業に携わるメディチ家。
そこで得た財は芸術への投資によって市民へ還元するという風にとれるジョヴァンニの発言に、納得する人々。
さすが、豪華王・ロレンツィオの息子というべきか。
そのロレンツォの容態が日に日に悪くなっている……不穏な雰囲気をまとうジョヴァンニの兄・愚かなピエロ。

その一方でコロン船長(コロンブス)のサンタ・マリア号の寄港、大航海時代の幕開けと未来への希望を感じさせる描写が。
ローマへの出立とそれぞれの別れ。
それと並行して惣領さんの緻密な描写で描かれた、イタリアの自然に、陽差しや空気感を想起させられる。

チェーザレやロレンツォにローマへ行くにあたり忠告を受けるアンジェロ。名ばかりの共和制、貴族たちの陰謀や数多い貧民層の人々…魔窟だ。
「ローマでは貧民に関わるな」…すべての貧民に施しを与える事は叶わない。また、自身で得られない贅沢を教えてはならない。

緋色の法衣に身を包み、ジョヴァンニは枢機卿になる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史 / 歴史物
感想投稿日 : 2022年4月21日
読了日 : 2022年4月21日
本棚登録日 : 2022年4月13日

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