紙飛行機という低レイノルズ数の飛行体を趣味で作っていた者としてはピンポイントでヒットした本だったので紙の本にもかかわらず購読。
低レイノルズ数では普通の飛行機のような厚い翼よりトンボの翅のように薄いものがよい、とはよく言われていたけれど、脈により折れ目がついているのは強度保持のためだけだと思っていた。
著者はレイノルズ数が同じであれば空気も水も相似として風洞に代わり水槽でトンボの翅など低レイノルズ数領域の翼の実験をして、その秘密に空力面から迫っている。
翼断面がギザギザの場合、それが渦をまとう形で空気の流線形の翼を形成し、効率のいい翼になるとのこと。トンボの翅は軽くて剛性の高い構造であると同時に優れた空力特性も持っていた!
絶対的な効率は曲板翼の方がよいが、トンボの翅は乱流に強く、ロバスト性が高い。これは屋外を飛ぶ昆虫に必須の性能。
ここから独自の軽くて効率のいいマイクロ風車の開発に話が進展し、さらに生物の進化からヒントを得た発想法へとつながる。
長いこと停滞していた紙飛行機の開発に一つおおきいヒントをもらった。まずはトンボ飛行機を真似て作ってみようと思う。
なお、著者がトンボ型飛行機を飛ばした経験から、低レイノルズ数領域では主翼-胴体-尾翼という飛行機型より、2枚の翅が前翼上反角あり、後翼水平で近接して並ぶトンボ型の方が乱れた風でも安定して滑空できるとのこと。方向安定のための垂直尾翼は不要、ただ、ピッチングとローリングの軸を分離するためには胴体は必要、とのことでトンボの形態が理にかなっているとなる。
低レイノルズ数領域は計算がまだ不可能というので、実は人類は超音速戦闘機より、目の前の昆虫の飛行の方が分からないことが多い。
- 感想投稿日 : 2018年5月31日
- 読了日 : 2018年5月31日
- 本棚登録日 : 2018年5月31日
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