ビジネス思考実験

著者 :
  • 日経BP (2015年12月15日発売)
3.58
  • (7)
  • (12)
  • (10)
  • (1)
  • (3)
本棚登録 : 175
感想 : 13
4

ビジネスの考え方、各種モデルについて、思考法・考え方などについて整理された本。考える力、使う力が養われる点で良著。

<メモ>
・因果関係について。
 自然科学①AはBに時間的に先立つ(先行性)
 ②AがなければBは起きない(不可欠性)
 ③Aだけ起きればBは起きる(普遍性)があるもの。
 一方、社会科学は①の先行性はあるが、
 ②Aがなくても、CがあればBは起きる(代替原因の存在)③Aに加えて、DもなければBは起きない(原因の部分性)などが存在する。自然科学のように強い法則性を主張することは難しいが、それをやった方が成功しやすい。といったようなそういう性質は確かに存在する。経営学は普遍法則ではなく、傾向法則であるとされる。
・時間軸だけは、上記のとおり、社会科学でも成り立つ。
・ファイブフォース理論で5つの力が決めるもの
 ①業界の平均的収益率を決める
 ②業界の成長性や規模をきめるものではない。
 ③5つの力の影響力は業界内の戦略グループによって異なる。
・誰が業界内にいるのかを決めることはファイブフォース理論ではとても重要。ポーターは業界を「互いに代替可能な製品を創っている会社の集団」。
抽象度をあげると代替品の範囲は広がるが、分析が無意味になる。抽象度を上げすぎないために、技術が同じもの、機能が同じものを代替品とみなすという考え方がある。
・製品志向よりも市場志向のほうが変化に強い。化粧品ではなく、希望を売る。鉄道の運営でなく、人と物資を運ぶなど。
・資源ベース戦略論の基本メッセージ
①ある企業が優れた業績を上げるのは、他社よりも優れた経営資源や能力を持っているからだ。
②他社に真似されにくい、自社独自の能力(コンピタンス)や資源の蓄積が競争優位の源泉となる。
・企業の経営資源の種類
 →一般に企業の経営資源とはすべての資産、ケイパビリティ、コンピタンス、組織のプロセス、企業の特性、情報、ナレッジなど、企業のコントロール下にあって、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり、実行したりすることを可能にするものである。
・経営資源は次の4つのカテゴリーに分類される
①財務資本 ②物的資本 ③人的資本 ④組織資本

・企業内部の強み、弱みを資源に基づいて分析する際に発すべき4つの問い ①経済価値valueに関する問い 
②希少性rarityに関する問い ③模倣困難性imitabilityに関する問い ④組織organizationに関する問い

・ビジネスモデルとは何か 
 ビジネスモデル=どのような事業活動をしているか、あるいは構想するかを表現する「事業活動の構造」のモデル。少なくとも以下の三つのモデルが必要
①戦略モデル:どんな顧客に何をどう魅力付けして、どんな資源を保有して、どのように提供するかを表現する
②オペレーションモデル:戦略モデルを実現するための業務プロセスの構造を表現する
③収益モデル:事業活動の利益をどう確保するのか。収入を得る方針とコスト構造を表現する。

・時に必要となるモデル
①市場モデル:市場の構造や顧客の特性分布を表現する
②競合モデル:ライバルや新規参入者に対してどう競争しようとしているかを表現する
③サプライチェーンモデル、パートナーモデル:どういう企業とパートナー関係をつくりどういう関係をつくるかを表現する(拡張されたオペレーションモデル)
④コミュニティモデル:コミュニティとどういう関係をつくるかを表現する
⑤課金モデル:誰にどういう方法で課金するかを表現する

・最も重要なことは「顧客は誰か?」である
 とくに重要なことは「顧客にとっての魅力を高めること」「ライバルが追随できないようにすること」

・戦略モデルキャンバス
 コスト構造・収入モデル・価値提案・ターゲット顧客・チャネル・機能魅力・ライバル代替品・活動・資源・パートナー取引先・コンテキスト

・市場の境界線を引きなおす6つのパス
①オルタナティブな産業 業界内のライバル企業に照準を合わせるのでなく、オルタナティブな産業を見渡す
②戦略グループ 戦略グループ内部のポジションに注意を向けるのでなく、業界内の様々な戦略グループを見渡す
③購買者グループ 買い手の要望によりよく答えることに力を注ぐのでなく、業界の購買者グループを定義しなおす
④補完製品やサービス 業界の枠組みの中で製品サービス価値を最大化しようとするのでなく、補完的な製品とサービスを見渡す
⑤機能や感性の方向性 業界の機能感性の方向性に沿って価格パフォーマンス比を改善するのでなく、業界の機能あるいは感性の方向性を問い直す
⑥時間 外部トレンドへの適応を目指すのでなく、将来にわたって外部トレンドの形成にかかわる
・ERRCグリッド コストダウンと付加価値の向上を同時に行う
①減らすReduce 業界標準と比べて思い切り減らせる要素は何か
②創造するCreate 業界でこれまで提供されていない今後付け加えるべき要素は何か
③取り除くEliminate 業界常識として製品に備わっている要素のうち取り除けるものは何か
④増やすRaise 業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か

・クリステンセンの破壊的イノベーションの3つの法則
①過剰満足(既存品が機能過剰)あるいは非消費の顧客をターゲットとすることから始める
②「good enough」が大きな価値を持ち得ることを認識する
③既存の競合他社にとって魅力がない、あるいは関心がないと思われるようなことを行う

















     

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済・経営関係
感想投稿日 : 2016年6月5日
読了日 : 2016年6月5日
本棚登録日 : 2016年6月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする