教え子の中学生が、お父さんに買ってもらった本らしい。童話探偵のブルースが、正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義、をコンセプトに、勧善懲悪の寓話として読まれがちな様々な童話を、別の正義の物語として読み直していく物語。
文学のような解釈学を勉強していると、そもそも作品の違った解釈を考える意味は何なのかと問われることは多い。童話の世界で「悪役」とされるキャラクターたちにも、それなりの事情があったのではないか、と想像することで、「現代に生きる解釈」=教訓を見つけるというのが、とても分かりやすくてよかった。
個人的に面白かったのが、それまでブルースの読み解きを聞くだけだった助手のシナモンが、最後の読み解きを自分一人でするシーン。ブルースの読み解きを繰り返し聞いてきたシナモンは、ブルースだったら、何て言うかを考えることで、「梨売りと仙人」の物語を解釈する。
物語を読むことって、こういう風に次の世代に繋がっていくのだなあ、ということを感じるワンシーンだった。シナモンは、ブルースに君だったらどう考えるかを、繰り返し繰り返し問う。そして、返ってきた答えに対して、その考えが、いかに間違っているかを、優しく諭す。シナモンは、そうした経験を通して、ブルースだったら、何て言うだろうか、と考えるようになり、最後には、ブルースすら思いつかなかった読み解きにたどりつく。
少し残念なのは、ブルースの読み解きが、割と常識的であった点。タイトルにも「10歳からの」とあるので、まあ、こんなものかとも思うが、もう少し悪を悪のまま、尖った正義を語ってほしいという気持ちもあった。
ただ、子どもも読みやすい物語で、逆の立場だったらどうなるだろう、という想像力を働かせる。物語を解釈することの意味を教えてくれる本として、よい本だと思った。
- 感想投稿日 : 2024年4月19日
- 読了日 : 2024年4月19日
- 本棚登録日 : 2024年3月27日
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