美しき鐘の声 平家物語(ニ) 春の夜の夢のごとし (意訳で楽しむ古典シリーズ)

著者 :
  • 1万年堂出版 (2019年8月26日発売)
3.88
  • (3)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 62
感想 : 3
4

一巻に引き続き、面白かった。清盛の長男、重盛の死から、清盛の死までが収まっている。
以仁王に令旨を受けて、頼朝が挙兵。水鳥の羽音に驚いて、平維盛が率いる平家軍が逃げる「富士川の戦い」の有名な話も入っていて、素人感覚としては、いよいよ面白くなってきた感がある。平家が、もはや武士としての気概を失っていたことが明らかになっていく様は、なんとも哀れで好きだ。

改めて読んでみて、印象に残ったのは、ラストの「清盛は「ただ人ではない」って、本当か」だった。清盛が、中国との交易のために摂津国、福原に「経の島」という防波堤を築いたことを高く評価されたり、閻魔王が清盛を比叡山の座主、慈恵僧正の生まれ変わりだとしたりする。要するに、『平家物語』では、清盛の死に際して、良かった所の話もされているということ。
特に、閻魔王に至っては、「身をもって、悪業の恐ろしさを、全ての人々に教えられたのだ」と言い、清盛の悪行は、世に悪業の恐ろしさを伝えるための反面教師としてのふるまいだったと評価する。これも素人感覚だが、「閻魔王」の評価というのがどれほどうれしいものか、というの分からないので、当時の人たちにとって閻魔王というのは、どういう立ち位置だったのだろうと思うばかりである。
いずれにせよ、『平家物語』では、清盛を悪人としたり、善人としたり、と様々な視点から描かれているのが面白かった。

それにしても、重盛のファンとしては、重盛の死が、わりとあっさりと描かれて終わってしまったので、重盛の死と相まって悲しかった。唯一、清盛を諫めることのできた平家の良心というイメージで、シンプルにかっこいい。一巻の方の内容になるが、後白河法皇を攻めんがため、鎧兜を身につけた平家の軍勢の中、私服で清盛を諫めに行くシーンは、たまらなく好きである。
大事とは、国家の大事を言うのである。
重盛が死んだあとの平家のヘタレっぷりを感じられる二巻であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月2日
読了日 : 2024年3月23日
本棚登録日 : 2024年2月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする