清水邦夫〈1〉署名人/ぼくらは生れ変わった木の葉のように/楽屋 (ハヤカワ演劇文庫)

著者 :
  • 早川書房 (2006年11月22日発売)
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感想 : 7
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マイミクさんが清水邦夫の「楽屋」の観劇日記を書かれていて、再読しました。
読んだのは25年ぶりくらいです。
ほとんど忘れていましたが、面白く読みました。
含蓄のあるセリフが多くて、感じ入りました。

「楽屋」が載っている戯曲集の出版は1977年で、このあと1985年頃まで高校演劇でも「楽屋」はブームになりました。
女性4人というのは高校演劇には便利な配役なのです。
「楽屋」は、ちょうど60分の劇でした。

清水邦夫さんの作品は高校演劇界でも、もてはやされた時期が長く続きました。
「朝に死す」「僕らは生まれ変わった木の葉のように」「戯曲冒険小説」「楽屋」の舞台は何度も観ました。
わたしも愛読していました。
1977年の福岡県高校演劇大会に清水邦夫さんは審査員としてお越しになり、わたしはこの時始めて清水邦夫さんの話を聴きました。

「清水邦夫全仕事」を取り出しました。
「楽屋」の女優C(村岡希美さん)のセリフに女優の鬼気迫る執念を感じさせる名セリフがありました。

「キー子、あんた、相手が悪かったんだよ。あたしゃ心臓にヒゲが生えてんだから。そりゃねえ、女優二十年、だてに年齢はくっちゃいないんだよ。あんたなんて、体験したことはないだろ。この髪の毛の、毛穴という毛穴からじわっと血が吹き出すような思い、あたしゃ何十回となく味わってんだよ。わかるはずはないさ。毛穴全部から血が吹き出す感じ、相手をさすか、自分が死ぬか、あんた、人間が吼えるのって聞いたことある? わめくとかののしるとか、そんなんじゃないんだよ、吼えるんだよ。アパートのトイレにこもって、ひとり、一晩中五時間も六時間も、あれは人間じゃないよ、猛獣の吼え声だよ。喉がかれるたびに手洗いの水をのんで、吼えて吼えて吼えまくって、おかげで前よりだんだん声が出るようになってさ、つまり蓄積、へどがでるような・・・」

高校演劇に携わっていて、舞台の質の差はつまるところ執念の差だと感じることがままあります。
それは顧問だったり、中心的な生徒だったりするわけですが、舞台成果が及ばないときには、自分は執念が足りないと思うと納得します。

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感想投稿日 : 2009年5月31日
本棚登録日 : 2009年5月31日

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