日本手話と日本語対応手話(手指日本語): 間にある「深い谷」

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  • 生活書院 (2011年9月1日発売)
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感想 : 8
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ただただ驚きしかなかった。

テレビのニュース画面でやっている手話は、聾者には分からない?
高校生手話弁論大会の手話も、聾者には分からないものだなんて。

一体誰のための手話なのか。

元々聾者が使う「日本手話」。そして聴者が使うことが多いのが「日本語対応手話」。その違いは語順や表現方法にある。つまり、全く違う言語と言ってもいいのだ。

著者は後者について「手話日本語」と呼称を変えるべきだと述べている。理由は、日本語を手話で表したものであるから。

語順が同じだから、聴者が口話しながら手話をするのにも向いているし、聴者が理解しやすい。

一方、日本手話の長所は簡潔な表現にあると私は思う。「手話日本語」で何語も必要になる表現でも、日本手話なら数語で済んだりすることも珍しくない。

悲しい気持ちになったのは、高齢の聾者の女性が自身の日本手話を「恥ずかしくてみっともないもの」と認識していたこと。

かつて聾学校で手話が禁止され、口話や読唇術で授業されていたこと。口話を伴う手話が最上とされていたこと。

そうさせていたのは、意識か無意識か、私達聴者なのだと思う。大多数を優先し、少数派を大事にしない現実を突きつけられた気がした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 80言語
感想投稿日 : 2023年6月29日
読了日 : 2023年6月29日
本棚登録日 : 2023年6月29日

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