サイド・トラック: 走るのニガテなぼくのランニング日記

  • 評論社 (2018年10月10日発売)
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感想 : 23
5

アメリカのジュヴェナイル小説。主人公がADD(注意欠如)を持つ少年ジョセフで、ちょっと『夜中に犬に起こった奇妙な事件』のような感じでした。人と違うとか要領が悪いとか内向的だといじめの対象にされてしまうのは、日本もアメリカも同じみたいです。ジョセフは自分の特徴も、周囲で起こっていることも、起きそうなことも、その原因もきちんと理解して把握しているのですが、器用に対処することも逃げることも出来ず、嫌な思いをしながらもある種諦めているような感じの子。通級指導教室という名の特殊学級の担当のT先生の取り組みで、クロスカントリーのチームに入ることになります。緑色のものが怖くて触ったり近づいたりすることも出来ないし大きい音も苦手なので、練習場に鳥のフンが落ちていたりスタート銃の音に硬直してしまったりしながら、自分が挫折したらほかの子たちもレースに出られなくなってしまうので弱音を吐きながらも真剣に努力してがんばる様がすがすがしかったです。女の子なのに背が高く運動神経抜群な転校生ヘザーとの関係が、とても良かったです。アメフトをやっている花形でルックスの良い男の子がひどいいじめっ子、というのは映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」でもそうだったしアーヴィングの小説でもあったと思うし他のミステリでも読んだことがあります。『右手にミミズク』に続き、この作品でもおじいさんの存在が光っていました。タイトルとサブタイトルについては、出版社がいろいろ考えて工夫してつけたのだろうとは思いつつ、原題に置き換える自然な日本語が無い(思いつくのは「落ちこぼれ」とかだけれど、ニュアンスが違う)のも理解しつつ、なんかちょっと、もったいない感じがしました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: セイチョウ
感想投稿日 : 2021年3月5日
読了日 : 2021年3月5日
本棚登録日 : 2021年3月5日

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