無責任の構造: モラル・ハザードへの知的戦略 (PHP新書 141)

著者 :
  • PHP研究所 (2001年1月1日発売)
3.59
  • (4)
  • (19)
  • (23)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 133
感想 : 16
3

 この本のことを簡潔に説明すると、「組織内の人間関係によって事態が悪化していく事にどう対処していくか」についてまとめた本、ということになるのだろうか。

 JCO事故というものがあった事は知っていたが、いかにして発生したかは知らなかったので、本書を読んでショックを受けた。どうして自分たちがしている事を客観的に見ることが出来なかったのだろうか。
 という、疑問については一章以降で、その発生したメカニズム、発生しうる環境・主義、対処法について解説している。
 四章の「「無責任の構造」克服の戦略」については「これが出来たら苦労しないよ」と言いたくなったが、一つの参考にはなると思う。

 ちなみに、本書で使われている言葉は心理学や社会学を学んだ方によっては「今更?」と思えるものも多い。サッと目を通すだけでも良いのではないか。

自分用キーワード
一章
JCO臨界事故 リスク心理学 計画被爆(臨界事故などが起きた時に復旧・廃炉をするために被爆をすることをコストとして受け止めること) 国際原子力事象評価尺度(INES) 原子力損害賠償法 八条機関から三条機関へ(「機関」は「委員会」と表記されることも) 一バッチ(ウラン正味の量が2.4kgを超えなければ安全とされる) 臨海安全基準(質量制限・形状制限) クロスブレンディング ウェット法・ドライ法(ウラン燃料の製造法) 

二章
同調(筆者は同調には「内なる同調性」「外なる同調性」の二種類があると述べている) アッシュ(有名な線分の長さを答えさせる実験の考案者) 服従 ミルグラムの実験(筆者曰く「実験者と参加者は一次的な関係であり、服従を拒否することが出来て、罰が無いにも関わらず服従が起きたことに恐怖を抱く」)  勢力基盤(心理学) 内面化 フェスティンガー「認知的不協和の原理」 選択的情報選択(認知的不協和を低減するために行う) 禁じられたおもちゃのパラダイム(組織内の問題を提起した人に対し、「一度静かにするように」軽い圧力を掛けることで「時間の経過(上は考えてくれているようだ)・間接的な方法(会社に貢献したという安堵)・控えめな報酬(長い目で見ると改善する)」という三要素が働き、内面化を起こして、無責任の構造の構築につながると述べている。逆に意固地になってしまい、改善が遅れることも) 社会的促進(例:満腹になったニワトリの隣でもう一羽にエサを与えると、再び食べ始める) 社会的手抜き コーガン・ウォラック型の課題(個人としての判断か集団判断かが分かる) リスキーシフト(集団での議論は複雑で高度な処理ができなくなり、冒険的な選択を選ぼうとする) フレーミングの効果 
 
三章
権威主義(アドルノの研究が有名) ファシスト傾向 ドグマティズム(教条主義) 因習主義 反ユダヤ主義 エスノセントリズム(自民族中心主義) 因習的家庭観 形式主義 ロッドアンドフレームテスト(物事を認知するにあたって、他律的な文脈の影響を強く受けるかを調べる) 属事主義(筆者の造語。事柄の是非を基本としてものを考える) 属人主義 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2013年7月14日
読了日 : 2013年7月10日
本棚登録日 : 2013年3月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする