SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2016年12月15日発売)
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感想 : 9
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SMAPについて語ると収拾がつかなくなりそうなので…高校生の頃英語の日記を書くという宿題で、「自分はSMAPが好きなんだが、ずっと彼らをテレビで見ているせいか、彼らがただの芸能人であることはわかっているけどなんだか付き合いの長い知り合いのような感じがする」といったもはや日記ですらないくだらないことを書いたら、ネイティヴスピーカーの先生から「テレビの力って恐ろしいものですね。ジョージオーウェルの1984という本をぜひ読んでみなさい」という遥かな高みからのお返事をいただいた苦い思い出を告白するにとどめることとします(ちなみに未読)。

や、しかし。本書を読んだら、その「知り合いかと思えてきちゃう感じ」こそがSMAP人気のミソだったのでは?私けっこう核心ついてたのでは?と思えてきました。
奇しくも1984年生まれである私にとって、夢中になった芸能人はSMAPが初めてくらいなので、それ以前のアイドルやらスターやらとSMAPがどう違ったのかという視点は、実体験としては持ち合わせていません。
でもこうした本やネットでの言説によると、光GENJIまでは手の届かない王子様系だったアイドル像が、SMAPからは身近でフツーで、作られていない等身大の受け答えをする男の子、というのに変わったというのが定説のようです。女性アイドルではおにゃんこクラブというのがいたり、背景には歌謡曲業界の制度変化があったり、歌番組の衰退、バラエティ番組やお笑いの隆盛があったり、SMAP自身もデビュー当初は不遇の時代があって苦労してきたという歴史があったり、まあそんなようなことがよく説明されています。

本書でもそうした内容が述べられますが、テレビやラジオやインタビューやエッセイ本などでメンバーたち自身が語っている言葉を多くとりあげて、SMAP本人たちにとってのSMAPとは何だったのかとか、SMAPとしてどう社会と関わろうとしたのかとか、そういうようなことを語ろうとしているところが特徴的でした。
データや事実だけでなく本人の言も確認していく肉迫感は嬉しいし、やはり「彼らもこういう気持ちのはず!だよね!」と思いたい気持ちを満たしてくれる面はありますが、それってちょっと僭越じゃないのって言いたくなったりもします。
そんなわけでストーリー作りに恣意的な部分があった感はあるものの、そこはライトファン同士わかりあえるところでもあり、タイトル・副題の印象に反して「同じ気持ちをわかちあえた」みたいな読後感がありました(笑)

それでいうと、冒頭の英語の先生とは少なくともあのポイントにおいては全く気持ちが通い合わなかったということになりますが、私も30をいくつか過ぎ、テレビをほとんど見なくなった時期も経て、今になってみるとテレビにのめり込んでいる若い子に「まあ落ち着け」と言いたくなる気持ちもよくわかる。アメリカではトランプ大統領誕生で1984の売り上げがあがっているというニュースも耳に新しい今こそ、ついに私も1984を読むべき時なのでしょうか…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: なるほど系
感想投稿日 : 2017年1月29日
読了日 : 2017年1月29日
本棚登録日 : 2017年1月29日

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