恐竜まみれ―発掘現場は今日も命がけ―

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  • 新潮社 (2019年6月26日発売)
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感想 : 3
4

アラスカのアクチャック自然保護区に行くために天候回復を待ってフロート水上機に乗り込んだ著者たちは、引き潮のために濡れながら海岸まで5往復もして重たい荷物を運び込む。宿泊施設は木造の小屋で、メインのドアは壊れていた。近くに残っているグリズリーの足跡にドキドキしながら調査を進めていたが、最終日にグリズリーが小屋の壊れたドアに近づいてきた……。

恐竜学者である著者が、主にアラスカ、・カナダ・モンゴル北海道における恐竜発掘調査の困難と楽しみと発見を語るエッセイ(?)……なのかな?

著者の大発見の秘訣(人の歩かない、歩きにくいところを探す、とにかく歩いて広く探す、必ず「ある」と思って探す、人が探し終えた跡も探す、等)が明かされる。

また、盗掘や化石の売買、仮説や持論の発信についての著者の想いも語られる。
印象深かったのは、ここで、いま教科書に載っていることや、今正しいと思われていることも、将来覆ることがある。でもそれは、当時の考え方の足跡であり、それを元に新たなデータが集まり検証される。だから、発信することは全体的にはプラスになるので、恐れる必要はない、というのである。
これは科学研究以外のことにも言えそうですよね。

驚いたのは、「ハイエナ作戦(人が探した跡もまだ探す)」のところで、発掘した跡を探し当てるために落ちているゴミを探すところ。新聞紙や空き缶があれば、いつどこの国が発掘したのかわかるというが、そもそも残っていていいものじゃないんじゃないですか???
エベレストに登山隊が残したゴミがひどいとかよく聞きますが、今どき、欲しいものだけ持ち帰ってゴミを残すなんて、ひどすぎます。


知的好奇心と冒険心をくすぐられながら気楽に読めるおもしろい本ですが、文章的にはちょっと難を感じるところもあります(スミマセン(汗)、子どもたちに薦める本候補なので、ちょっとここは辛口で)。
例えば、
30頁「弱火をつける。」
これは「弱火にかける」のほうが適当では?

235頁「長谷川先生は、日本の恐竜研究を立ち上げた人であり、多くの研究者を育てた。同時に90歳になった今も、発掘や研究を続けている。」
ここは「同時に」ではなく「そして」とかのほうが繋がりませんか?



私は普段テレビを見ることがない(もう何年(何十年???)も家にテレビがない)ので、知らなかったのですが、この方メディアではかなり有名な方らしいですね(すごい発見いっぱいされていますもんね)。

実はこの本、複数の図書ボランティア仲間から小学5年生にブックトークしてくれと薦められて読んだ本なんですが、漢字の使われ方からも、普通は中学生以上のほうが良さそうですね。
でも、著者を知っていたりして、恐竜が好きだったりして、読みたい子はそんなものお構いなしに読んでしまうでしょうから、どんな反応が帰ってくるか楽しみです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年11月7日
読了日 : 2020年11月7日
本棚登録日 : 2020年11月7日

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