韓国窃盗ビジネスを追え: 狙われる日本の「国宝」

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  • 新潮社 (2012年10月18日発売)
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感想 : 3
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時折、各地の寺社から仏像や経典などの骨董品が盗まれたと云うニュースを見ることがあるが其れら盗品は何処へ行くのだろうか?とかねがね疑問に思っていた。ほとぼりが冷めてから密かに収集家に売られるのかな、とか勝手に想像をしていた。それに対する一つの回答例が韓国への持ち出しというのだ。

韓国で日本から盗まれた高麗時代の仏教美術品が水面から顔を出し、韓国国宝に指定されるという騒ぎが起きたことから韓国美術界に取材を行い、終にはその窃盗の実行犯であろうと強く推測される人物にまで迫るというノンフィクションが本書である。

そもそも高麗時代の仏教美術は日本に数多く所蔵されており、日本渡来の経緯は別としてそれを窃盗という手段を通じてでさえ韓国に取り戻すことを肯定的に捉える国民感情があり、更にはそれを高額で買い取る収集家が存在することがこうした窃盗を後押ししているようだ。否、それ以上に高額で買い取ることを前提に日本への窃盗旅行費用を工面したりすることすらされていることが取材の過程で明らかになっている。

著者は日本女性でありながら韓国の怪しい骨董品屋、収集家そして別件で逮捕された窃盗容疑者自宅への取材はもとより警察、留置場、そして刑務所まで日本から盗まれたであろう犯人・美術品の消息を求めて取材する執念には感服する。

骨董美術界でニセモノ・贋作の存在は日常茶飯事、騙されるのは鑑定眼がないからという「常識」が通用する魑魅魍魎の世界というのは恐らく日本も他の国も一緒なのだろうが、良くぞこうやって追いかけたという感じだ。ちょっとばかり本書のタイトルが最近の日韓関係を反映してのことかセンセーショナルな感じもするのだが、飽くまでも地道かつ長期に亘る取材は敬服に値するジャーナリスト魂でもある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2012年11月12日
読了日 : 2012年11月12日
本棚登録日 : 2012年10月24日

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