シャーロット・マクラウドのシャンディ教授シリーズ第10弾。
残念ながら、原題の“EXIT THE MILKMAN”の“退場”ではないが、1996年に出されたこの作品が、シリーズ最後となっている。
すっかりお馴染みのパラクラヴァ農大が誇る酪農管理の泰斗たる教授のジムは、毎日バケツに入れた好物のクリームを持ち帰る習慣から“牛乳配達”とあだ名される変わり者だったが、ある日、忽然と姿を消してしまい…。
またまたおそるべき学長の命を受けた、シャンディ教授が探索に駆り出されるが、今回はワールド級の方向音痴な友人のミステリ作家カトリオーナが大活躍。
後半は、更なる意外な展開で、極悪な犯罪が露呈するまでのミステリーとしてのプロットも読みどころなのだが、そこはあくまで、個性的かつ温厚な面々の雰囲気とユーモラスな描写がまさって楽しいよみものと仕上がっている。
登場するミステリー作家カトリオーナは作者の一面を見せていてくれるのだろうか…とマクラウドに思いをはせてしまうが、彼女自身も中年以降の作家として活躍している。
ここでの、愛情とそれぞれの情熱と喜びを抱いている魅力的な登場人物たちが中高年層であり、農大と生活の場であるパラクラヴァの知的で落ち着いた雰囲気など、成熟したユーモア・ミステリーの傑出したシリーズ。いいですねぇ…。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学・文芸書
- 感想投稿日 : 2009年3月29日
- 読了日 : 2009年3月29日
- 本棚登録日 : 2009年3月29日
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