タコの丸かじり (文春文庫 し 6-25)

  • 文藝春秋 (1994年8月1日発売)
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本棚登録 : 192
感想 : 14
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激辛30倍カレーの辛さは?「くさい飯」の献立ては?世に食をテーマに扱ったエッセイは数多かれど、「彼のエッセイを楽しく読めるのが日本人」ということを故米原万里さんがおっしゃっていた意味が分かりました。

故米原万里さんのエッセイでこのシリーズの一冊を海外生活が長い友人の下に置いていったところ、故郷の食生活を思い出させたとして、エラい顰蹙を買ってしまった、という話を読んで、このエッセイを読んでみました。これが最初に単行本化されたものなのだそうですが、現在は絶版のようですので一刻も早い復刊を願うところでございます。

内容は、おそらく皆さんのほうがよくご存知かとは思いますけれど、「しょーじ君」こと筆者が食にまつわるあれこれを味のあるイラストと文章でつづるエッセイでございます。この本が時代を感じさせるのはデパートの屋上にあるレストランで筆者と年配の男性が食事をするときに感じたことを書いた箇所で、デパートの屋上のレストランは子供のころに行った以来、ずいぶんとご無沙汰なところはもちろん、僕の記憶にあるレストランは当の昔にデパートごと廃業してしまっているので、2度とお目にかかることはないんだなんていうことを読みながら考えてしまいました。

ほかにも、焼き鳥はなぜ串に刺してあるのか?という話では裂いた正肉やモツを家族総出で串に打つ姿を見ながら、家族の生業について綴った箇所も、無性に僕の心を捕らえて話さなかったことを覚えています。確かにこういう話を異国に住んでいる人間が読めばそら酷な話だろうなと読みながら考え込んでしまいました。このシリーズはずいぶんと長いものみたいですが、読んで面白かったので、これからも折を見て紹介させていただくことにいたします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年2月22日
読了日 : 2012年2月22日
本棚登録日 : 2012年2月22日

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