たった一枚の絵から多くの人々の未来が切り開かれてゆく… あまりに壮大な社会派ミステリ #なれのはて
■あらすじ
テレビ局の報道からイベント部へ左遷された主人公は、同僚から一枚の絵にフォーカスしたイベントの相談に乗っていた。事業化や著作権の観点から開催が難しいと上司から却下されるも、実現に向けて絵画の作者について調査を始める。ところが既に作者と思われる人物は行方不明で、作者の兄も焼死体として発見されていたのだった…
■きっと読みたくなるレビュー
たった一枚の絵から、戦後の日本社会、秋田の産業を紐解きながら、家族や人間の絆、そしてを報道と芸術を使命を描いた社会派ミステリーです。
シンプルに凄い!よくぞここまで調べた上、エンタメとして書き切りました。そのまま映画になってもおかしくない出来具合、濃厚な一冊でした。
まず物語の壮大さに感服ですよ。現代に残された一枚の絵から、ここまでのストーリーに広がっていくなんて思いもよらなかった。もともとは作者を探していただけなのに、その家族、戦争と産業など、様々な歴史や背景を知ることになる。
そこには人間ドラマがまるっと描かれており、当時の人々の鬼気迫る想いと情熱が伝わってくるのです。特に「なれのはて」に対する様々な価値観と向き合い方には、自分も現代社会を生きる者として考えされました。そしていつのまにか主人公に感情移入をしてしまい、夢中になって読み進めてしまうのです。
しかし、いつの世も人が必死で生きているにも関わらず、戦争はすべてを不幸にしてしまいますね。終わってしまったことは誰にも覆すことはできませんが、なんとも切ない思いに胸を痛めました。
また現代でも度々問題になる、報道の在り方についても警鐘を鳴らしてくる。資本主義とジャーナリズムの狭間で苦悩する者、胡坐を組む者。常に自分事として考えながら、どこに向かって生きていくのかが重要なんでしょう。
■ぜっさん推しポイント
本作の一番の推しどころは、たった一枚の絵との出会いからすべてが始まるところです。忙しく人生を走り続けていると、つい見落としてしまうこともいっぱいあるのですが、本作の主人公たちが熱意をもってことに当たったことが、多くの人たちの未来を切り開いていきました。
一枚の絵も、「なれのはて」も、いまを生きる我々も、100年先の未来のために何ができるかを考えていきたいですね。
- 感想投稿日 : 2024年1月2日
- 読了日 : 2024年1月1日
- 本棚登録日 : 2024年1月1日
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