出世と恋愛 近代文学で読む男と女 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2023年6月22日発売)
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5

NDC910

近代文学批評。
「日本の近代文学の主人公である青年たちは、恋を告白できず片思いで終わるケースが多い。たまに恋が成就しても、ヒロインは難病や事故などで、なぜか死ぬのだ。日本の男性作家には恋愛、あるいは大人の女性を書く力がないのではと著者は喝破する。
たかが文学の話ではないかと思うなかれ、近代文学が我が国ニッポンの精神風土に落としている影は思いのほか深い。明治期の立身出世物語が青年たちの思想に与えた時代背景は見逃せない。同時に戦争が文学に与えた強い影響も。
 
近代文学で描かれた男女の生き方は、現代日本の「人生の成功と恋愛」にかける人々の思いを読み解く大いなる鍵となる。」

第1章 明治青年が見た夢
●小川三四郎の純情
─夏目漱石『三四郎』1908年 明治41年
●小泉純一の傲慢
─森鴎外『青年』1910年 明治43年
●林清三の悲運
─田山花袋『田舎教師』1909年 明治42年

第2章 大正ボーイの迷走
●野島某の迷走
─武者小路実篤『友情』1920年 大正9年
●岸本捨吉の屈託
─島崎藤村『桜の実の熟する時』1914年 大正3年
●三好江治の挫折
─細井和喜蔵『奴隷』1926年 大正15年

第3章 悲恋の時代
●川島浪子の無念
─徳冨蘆花『不如帰』1900年 明治33年
●鴫沢宮の思惑
─尾崎紅葉『金色夜叉』1902年 明治35年
●戸村民子の焦燥
─伊藤左千夫『野菊の墓』1906年 明治39年

第4章 モダンガールの恋
●早月葉子の激情
─有島武郎『或る女』1919年 大正8年
●荘田瑠璃子の戦略
─菊池寛『真珠夫人』1921年 大正10年
●佐々伸子の出発
─宮本百合子『伸子』1928年 昭和3年

・明治初期の青年はみな状況したい/ 恋する女に想いを伝えぬままフラレる / 恋が実っても女は病で死ぬ 
・日露戦争後は「悶絶少年」ブーム。ぐだぐだ悩み悶え苦しむ青年が主人公
・大正はカミングアウト系私小説がヒット、自分の恥辱をあえてさらしちゃう~

・・・その時代によって、ベストセラー本には流行りがあり、パターンがある。時代背景とかも知って読むと、ちょっとおもしろいよ。ってのを斎藤さんが教えてくれる。
バブル期は「3高」高学歴、高収入、高身長がの男のモテの条件だったが、
2012年頃は「4低」低姿勢、低依存、低リスク、低燃費男がモテた みたいに、
時代が変わると真逆のタイプがモテたり、話題になったりもする。100年前も同じ。というのに、なるほどなー!!となった。
「この主人公に共感できない」=「この作品苦手」「昔の文学わけわからん」となってしまうのはもったいないな。どうしてこの主人公はこういう発想なのか。なんでこのような行動に出るのか。その答えが、意外とその時代背景やその時代の生き方みたいなのにあるのかもしれないんだな。国語の授業でいろんな作品に触れた時に、この見方を知りたかったな。

「近代文学の祖という割に以外とチンケな物語である。」「宮に変わって(貫一に)叫びたい、このウスラトンカチが!」と、斎藤さん口悪くて辛口で笑いながら読んだ。おもしろかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典を知る
感想投稿日 : 2023年11月17日
読了日 : 2023年11月28日
本棚登録日 : 2023年11月17日

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