平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書 2207)

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  • 中央公論新社 (2013年3月22日発売)
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平和主義、正戦論、現実主義、の3つに加えて、人道介入主義が台頭。

平和主義に対しては、「愛する人が襲われても黙っているのか」という批判がある。これは一種のレトリック。公的問題と私的問題を一緒にしない。私情に訴えている。あり得ない条件を付けているだけで、こういう例を引き合いに出すのは「難事件は悪法をつくる」の例になる。

ガンジーの非暴力不服従主義が平和主義の一例。公的平和主義。公的な暴力行使を許さない。キング牧師にも影響を与えた。
多くの平和主義者は、例外がある条件付き平和主義。

平和主義の2類型=絶対平和主義=個人的信条としての平和主義、と平和優先主義=政治的選択としての平和主義。戦争は名を変えた殺人の容認である。

戦争はコスト的に合わないからやめるべき=帰結主義。殺人は事態を悪化させるからいけない。広義の功利主義者でもある。
戦争は、資本主義的利権の表れ。戦争は搾取の一形態。したがって社会主義者は戦争反対と表裏一体。
帰結主義的には、戦争は反対することになる。
ただし、絶対反対ではないところが平和主義とは違う点。最大多数の最大幸福に資するなら、戦争賛成に傾く。
自衛隊または軍隊は帰結主義的に言ってコストに合うことか。

正戦論=正しい戦争と正しくない戦争がある。テロへの戦争は正しい戦争。自衛戦争は正しい戦争。しかし線引きは常に問題が付きまとう。個人の防衛は個人の権利だが、国家も同じと考えてよいか。正戦とは何か。

二ーパーの批判=平和主義者に対して、不作為は追認と同じだ、という批判。間違いを恐れるあまり暴力を放棄するのは無責任。消極的に不正に加担している。
アメリカでは、良心的兵役拒否が認められている。クェーカーの団体にはノーベル平和賞が贈られている。兵役拒否者には、課徴金やボランティアで代替する必要がある。
100%の非暴力がないのと同様に100%の正戦もない。

現実主義=できるだけ避けようとするが、平和を達成する手段として暴力手段によらなければならない場合がある。世界には中央政府は存在しない。国家の生き残りは最優先課題。戦闘力はこれを達成するための必要手段。
=平和を望むなら、戦争を準備せよ。勢力均衡。
しかし、安全保障のジレンマ=お互いの安全保障を求めるレベルが上がる。パワーが目的化する。
他国を敵とするホッブス的文化、他国を競争相手とするロック的文化、味方として認識するカント的文化。
暴力が正当化不当か、というよりも、平和主義は有効ではない、という批判。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞式の演説もこの現実主義に乗っ取っている。ヒットラーを止めることができなかった。=平和主義者からは論証が必要だとの批判がある。

人道介入主義
人権侵害を阻止するための武力行使は正しい。
PKOは相手国の同意がある。人道的介入にはない。人道介入は、権利ではなく義務、責任である。介入することで生じる市民の犠牲と、しないことで生じる犠牲のどちらが大きいか。
「善きサマリア人の法」=最大限の努力を行った結果であれば、結果責任を問わない。飛行機の中で急病人に歯医者が手当てをした場合。
平和主義への無責任との批判。人道主義者との対立。
軍事介入か、非軍事介入か。

絶対平和主義と平和優先主義の差異。
平和主義批判としての正戦論。逆に平和主義者は軍事介入ではなく非軍事介入を主張する。

平和優先主義が説得的ではないか。非暴力が主体、例外的に暴力を使用する。非軍事的介入を提案する。
民主主義が平和をもたらす。民主国同士は戦争をしない。ポピュリズムに流されないように立憲的制約をつけるのも一法。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2021年12月20日
読了日 : 2021年12月20日
本棚登録日 : 2021年12月20日

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