タイトルセンスがものすごくいい。死にたくなったら電話して
どこか引っかかるものがあって、聞いた事があるような、もしかしたら過去に言われた事あったっけ? と心に残るようなタイトル。
容姿はいいのだがエリート一家の落ちこぼれ三浪の徳山はバイトの同僚に連れられてキャバクラへ行った。そこで初対面のナンバーワンキャバ嬢、ミミこと初美に爆笑される。文字どおりの爆笑を。美しさと不思議さを身に纏った初美から名前と携帯番号、そして「しんどくなったり死にたくなったら電話してください。いつでも。」とのメッセージ入り名刺を渡される。「いつでも」の箇所にはご丁寧にアンダーライン。
初美の家の書架には殺人、残酷、猟奇、拷問、残虐、と、おどろおどろしい文字が並ぶ。膨大なちしきりょと記憶力で恍惚と語る「世界の残虐史」を聴きながら異様なセックスに溺れる徳山。ネットワークビジネスの世界にはまっている友人や、長い浪人生活の末に大学生になった先輩友人、バイト仲間たちなど、次々と外部との切断をしていった果ての結末が本当にやばい。
初美の頭のキレ具合がたまらない。ミステリアスさも妖艶そのもの。ひとりの男の浸食された破滅までの道のりをとても丁寧に描いている。
読みやすいし、目が離せなくて夢中になる。読者も初美の毒牙にかかるかのよう。新人作家とは思えない素晴らしい出来にめまいがした。第51回文藝賞、素晴らしかった!
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
李 龍徳
- 感想投稿日 : 2016年4月16日
- 読了日 : 2016年4月16日
- 本棚登録日 : 2016年3月29日
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